子供のころ、戦国の英雄ものがたり『真田十勇士』を読んで興奮した。真田幸村につかえる十人の勇士のものがたりだ。
猿飛佐助、服部半蔵(皇居、半蔵門の由来となった)、霧隠才蔵、三好晴海入道、祢津甚八などなど、個性派揃いのキャラクターはいずれもが子どもたちのスーパースターだった。
真田幸隆、昌幸、信之、そして幸村が実際に活躍したのは、信玄、謙信、信長、秀吉、家康などが覇権を争った戦国時代。
地方大名として誰に味方するか、誰に弓引くかは、そのままお家の存亡にかかわる意志決定。そうした中、覇権を誰が取ろうとも見事に泳ぎ切り、家名を守り抜いた真田一族の才覚は「したたか」そのものだ。
戦国の真田家と同じようなしたたかさで、現代のスーパー戦国時代を生き抜く地方会社がある。
東北某市、許可を得ていないので匿名とするが、人口数万人のこの街にも大手資本スーパーの乱入が始まって10年。
そんな中、このローカルスーパー『F』(仮名)は、「したたか」に戦ってきている。
「体力(資本)勝負に持ち込めば負ける。であれば、知恵と知識と情報で勝とう」と様々な施策を打ち出す。
・戦略会計の導入
・MG(マネジメントゲームの社内開催)
・計数知識に関する全社員対象の社内テスト(定期開催)
・FSPの導入
※FSPとは ↓
http://www.jmrlsi.co.jp/menu/yougo/my08/my0811.html
・MY法による計画経営の導入
※MY法とは → http://www.myhou.co.jp/
矢継ぎ早の経営改革。
経営陣も社員も猛烈に働き、猛烈に勉強した。昌幸と幸村の真田一族のように、スーパー『F』でも社長を支えようと二人の息子が経営に馳せ参じ、すでに中心的役割を果たしている。
経営改革の途上、こんなエピソードがあった。
ある中堅社員は仕事ぶりはまじめなのだが、計数にあまりにうとく、数字テストの点数が低い。彼を育てようと、社長自身が深夜にまで及ぶ個人補講を行うが、その甲斐なく、泣く泣く彼を更迭人事したところ、退職されたことがあるという。互いに悲しかっただろう。
「これで良いのだろうか」、と社長は我が改革路線を疑ったりもしただろう。だが、決めたことは断固やり抜いてきた。
44期めをむかえる『F』は、創業二年目から一度も赤字を出していない。そして、数年前には社運を賭ける意志決定をした。
新しい店舗をオープンするのに約5億円かかるなか、それを見送って、ほぼ同金額をコンピュータ投資にふりむけたのだ。
そしてどこにもマネできないFSPシステムを構築し、チラシ投入をゼロにし、それ以上の成果をあげる作戦に打って出た。
FSPの目玉は独自のポイントカード。徹底した地域密着と顧客指向のプログラムによって、社員はお客の顔と名前を覚える作戦が始まった。
昨年はそうした効果が一気に出はじめる。
あなたは、一人の売り場担当者がクリスマスケーキを年末に何個売るか想像がつくだろうか?
彼女の一声で予約申込書にサインした人の人数だ。
その数なんと400人。
クリスマスケーキは必ずどこかで買うもの。だったら、あの人から買おうということになる。
「鈴木さん、本タラバ(蟹)の良いのが今入りましたが今日のご夕食にいかがですか」などと電話が入る。当然、瞬時に売れていく。
この商品だったらあの人に・・・、そんな連想ができる八百屋感覚のスーパーなのだ。コンピュータによって、ベテラン八百屋店主の才覚を全社員が持てるようにしたのだ。
「かつてほど利益が出にくくなった」とはいうものの、本当の企業力によって生み出している今の利益は明日につながる。
「○○銀座」。
この小都市にも「銀座」があるが、ご多分にもれず通りの半分はシャッターが下りている。景気が良いなんてどこの話?という雰囲気が漂う。そんな静かなこの街で、こんなにも頼もしい会社があると知ると、不思議にこちらまで明るい気分におおわれる。
がんばれ地方会社!
がんばれ小企業!