ある地区の非凡会にて。
「武沢さん、毎日のようにあちこち行かれてて、フーテンの寅さんみたいですね。あっ、ゴメンナイ。変な意味じゃなくて、良い意味で」
酒の席でもあるし、こんなときは機嫌よく「ありがとう」と答えるようにしているが、内心では「俺は寅さんなんかじゃない。毎日東奔西走する竜馬か松陰だ。 そもそも、 “良い意味で寅さん” って何なんだ!」と憤慨している。
しかし、彼女の言わんとすることもわからぬでもない。何を考えているのかは余人のあずかり知らぬところで、本人の気の向くままに今日は東、明日は西、それが寅さんだ。
一方、尊皇攘夷、勤王倒幕などの思想や理想をしっかりもった上で政治活動するのが志士だ。
自分のために動くのが寅さんであり、人のため・国家のために動くのが志士だといえる。
私はどうか。
よ~く考えてみると、やはり竜馬ではなく、寅さんなのかも知れないと思い当たる。そんな自分の殻をやぶるためには、新卒学生を採用して彼らのパッションを浴びながら新しいことを始めるか、という気になった。
「会社として、経営者として武沢さんは将来何を目指しておられますか?」と多くの学生から尋ねられた。
優秀な学生ほど、自分の待遇のことより会社の未来構想に関心があるようだ。そこでわたしは次のように回答した。
「がんばれ社長!」は今日本にはない社長のための学校を作っています。世界に通用する学校なのではなく、日本的経営を強固なものにするのが目的の学校です」
すると学生の方から
「欧米ではすでにそうしたビジネススクールが盛んだし、日本にもあると聞いています。どこが違うのですか?」
「キリスト文明の西洋ではなく、仏教や儒教をベースとした日本製のカリキュラムですからメニューが全然違います。また、ターゲットを中小企業経営者を強く意識した内容になっていますので、経営者自身の自己管理、習慣管理、健康管理を問う部分が多くなるのも特色です。分かりやすくいうと、坐禅や書道、ヨガなどもメニューに入るということです」
「おもしろそうですね」と学生。
私はその反応に気をよくし、「それだけで驚くのは早い。囲碁将棋や算盤、それに武道のように、あなたは、『社長道○段』などと認定する段級試験があり、WEBでも自分自身で簡易診断できるようになっています。よく “社長業ってなに” と聞かれますが、それに対する真正面からの回答が今つくっている『社長の学校』です」
ずっと黙って隣で聞いていた学生が口をはさむ。
「日本にもデミング賞とか経営品質賞など、よい経営に関する客観基準がすでにありますが、それらとの相違は?」
「さすが学生、よく勉強してますね。たしかにその通り、良い会社を定義するための客観基準はありますが、良い経営者を定義したものはなく、社長業を極めるためのカリキュラムなども存在しません。だから作るのです」
「mixiのようなネットワークを作ると、より楽しいかも」と学生。
こんなやりとりをしながら、実際に行動していくのが、寅さんから竜馬への脱皮ではないだろうか?