未分類

相づちを我慢せよ

相手を黙らせたかったらずっと無視するか、あるいはその逆に、「うん、そうそう」とヤケに軽く相づちを連発すれば良い。
そうすれば、相手はやがて黙る。

営業だって同じだ。

相手のお客さんから断られたければ、何を言われても関心なさそうに無視しているか、何を言われても「はい、はい、はい」と言いながら笑って軽く相づちを打っていればよい。

桜が都内で満開をむかえようとしていたある日、友人の経営者が部下を連れてやってきた。

「武沢さん、時間があれば桜でも見に行きませんか。ちょうど今が見頃ですよ」
仕事にキリをつけ、誘われるがままに日比谷公園へ行った。だが、あまりの寒さに花見は断念し、寿司屋へ直行した。

熱燗をかたむけながら、友人が言う。

「武沢さん、こいつ(部下のこと)は俺にとって期待の新人だ。新人とはいっても年は行ってるがね。今年30かな。でも期待している割には営業成績が伸びないんだよなぁ。今までは大手カラオケボックスの店長として腕をふるってきたのを俺が見込んでスカウトしてきた。こいつを一人前にしたい。今日は武沢さんから直接仕込んでやってほしいと思って来たんだが今日は説教に酒にガンガンやってほしい」

「へぇ、そうなの。せっかくの花見だから楽しくやろうよ」と言いながらも、私は白木のカウンターの隣にいる新人君に、いくつか質問してみた。

「営業成績が伸びていないそうだが、今まで予算対比何パーセント程度で推移しているの?また、営業をするときに一番心がけている大切なことは何?」

新人君の話を要約すれば、

1.営業責任者としてスカウトされ、入社して以来半年になるが、予算対比はおおむね50%程度でしか推移していない。
2.社長の期待に応えたいと真剣に悩んでいるが、打開策は見つかっていない。責任をとって会社を辞めようという気分になることも多くなった。
3.会社の組織力によって、見込客に対するプレゼンの機会はたくさん作れている。従って、自分自身のプレゼン能力と人間力に課題があるように思う。

というようなことだった。

ヒラメだろうか。
旨い白身をつまみながらの差しつ差されつの会話なので結構話は脱線したが、新人君との話のポイントは、

「今後、半年以内に売上げを倍増させるためのプレゼン力を身につけるためにはどうすべきか」

というテーマに話題が絞られていた。

じゃあ、もう一度あなたに尋ねるが、「プレゼンで一番大切なものは何だと思う」と聞いてみた。
彼は私の予想に反して、一発で見事な回答を返してきた。

「私はお客さまのお話を充分にお聞きすることが大切だと思っています」という。まさしく模範解答だ。

人は、得られるゴリヤクが明快でそのゴリヤクが自分の望んでいることであれば、興味がある。進んで買いに出かけるはずだ。
だが、いかに素晴らしいものであっても自分にとって価値あるゴリヤクでなければ欲しくない。

従って、営業マンがまっさきに心がけるべきことは会話の前段部分をお客のニーズ関心に話題を集中させ、そのソリューション(問題解決)の手段、方法論として我が商材の価値を語ることなのだ。

そのあたりの前段のコミュニケーションが不十分なままで製品やサービスを熱っぽく語ったところで時間の浪費となる。

新人君は、そのことを熟知しているという。

だが私は、彼はウソを言っていると思った。彼はお客さんの話をとことん聞くような人間には見えなかった。それどころか、お客さんのことなどあまり関心がないように思えたのだ。

私の誤解なら良いが・・・

<明日につづく>