少しずつ、少しずつ脳のメカニズムが明らかにされつつある。それにつれて、私たちも脳(つまり自分自身)と上手に付き合っていく術を覚えていくことが出来るというものだ。
「頭が良いという状態ではなく、脳が良いという状態をめざしたい。脳が良いと、知的能力だけでなく、運動能力や健康維持能力も高まるからだ。そのためのちょっとした習慣や考え方を利用すれば、誰だって何才からだって簡単に脳の良い人になれる」と説くのは、『バカはなおせる』の著者、久保田競教授だ。
以前にも一度この本をご紹介したが、個人的にかなり気に入った本なのでもう少し書いてみたい。
著者によれば、脳にとって良い習慣と悪い習慣というものがあるらしい。
それは、脳幹のなかにある腹側被蓋野(ふくそくひがいや)という大変重要な領域があり、ここが働くと「脳内麻薬」とも「やる気の源」とも言われる「ドーパミン」が分泌される。つまり腹側被蓋野が活発に働くようになることが良い習慣であり、その逆が悪い習慣となる。
昔からドーパミンは “やる気が出るホルモン” として注目されてきたが、その好影響はそれだけでは済まないことが最近の研究でわかってきた。
ドーパミンは、運動時のスピード、力、手足の器用さや俊敏さ、考える力や集中力、決断力、記憶力にまで良い影響を及ぼすことがわかってきたというのだからスゴイ。
問題は、どのようにすればその腹側被蓋野がよく働くようになるか、だ。その答えが実にシンプルでうれしいものだ。
「快感を起こす刺激は全部良い」
というのだ。
サルを使った実験では、おいしいものを食べることが最高に脳に良いという結果がでたらしい。
サルにとっての最高の報酬は食べ物だが、人間にとって最高の報酬はお金ではないかと著者は指摘する。
また、スポーツの後、シャワーで汗をながしているときの爽快感はたまらないが、実は、”何か行動をする”だけでも腹側被蓋野は働きだすという。運動すること自体が脳にとても良いというのだ。
最新の脳科学原則による結論その1は、
「お金を得ておいしいものを食べて気持ちよいと感じることをやりまくる」
ということが、脳が発達し、知力も運動能力も高まるという結論だ。
ではその逆の生活をおくるとどうなるか。
たとえば禁欲生活する。断食し座禅瞑想して頭も身体も動かさない、といったライフスタイルをおくると脳に良くないらしい。
だが、禁欲や断食によってかえって腹側被蓋野が働き、気持ちよくなる人もいるので、個人差があるのかも知れない。
ここで、久保田教授は興味深い実験結果を紹介している。
サルに対して、キーを叩いたごほうびとして、腹側被蓋野を電気刺激してやる。サルはやる気が出て気持ちよいことだろう。そうしておいて、サルが空腹になる時間にエサや水をやる。その時、サルはどうするか?エサや水をとるか、はたまたキーを叩き続けるか?
正解は↓
「バカはなおせる」(久保田競著、アスキー)
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<明日に続く>