俳優の西村雅彦が映画帝国ハリウッドを取材するテレビ番組があった。その中で西村が、映画作りの最前線で活躍する技術者や開発者などのプロフェッショナルにインタビューする場面があったが、彼らは皆、例外なく個室を与えられていることに私は気づいた。
そういえば日本でも、生産的な仕事をする人たちには個室を与える企業も少なくない。個室を投資してまでも社員の集中力や想像力を期待しよう、ということなのだろう。
個室に限らず、社員に生産的な仕事をしてもらいたければ、そのように会社が支援しなければならない。
社員の仕事ぶりを自己管理に任せるだけでは済まないことが多いのだ。
例えば、時間的支援、物理的支援、精神的支援など、経営者として社員に対してできる支援策がたくさんある。
技術開発者やデザイナー、SEといった知的生産が仕事の人たちにとって、創造的な仕事ができる環境とはいったいどのようなものなのか。
創造的思考が起こる可能性と時間的プレッシャーとの相関関係を調べた「ダイヤモンドハーバードレビュー」編集部のレポートが興味深い。
それによれば、
1.時間的プレッシャーの中では創造的な仕事ができにくい
2.例外的に、プレッシャーの中で創造性が生まれるときというのは、
次のような共通条件があった。
・仕事の途中で邪魔が入らず、一日のほとんどが集中できた
・自分のやるべきことは大切なことで意味あることだと思っている
・一人または二人で仕事をした
その逆として、時間的プレッシャーが高いうえに仕事中に邪魔が入る職場は最悪かもしれない。
そんな職場では、従業員たちは自分の仕事が重要だと感じなくなってしまうというのだ。
やっている仕事がいかに立派であったとしても、理念がビジョンがいかに優れていたとしても、仕事のさせ方が乱暴であれば社員は意欲を失う。
「意味もなく多忙」という状態が続くと社員は燃え尽きてしまう。いや、社員だけでなくあなたもそうなりかねない。
物理的な条件として、個室もしくはそれに近い集中環境があること。
一人または二人で仕事をすると生産的になりやすいが、大きなグループの中に放り込まれ、全体でワイワイガヤガヤやる仕事環境ではダメだ。
また、精神的な条件として、自分たちの事業やプロジェクトの意味と価値の大きさを充分教え込もう。
一番理想的なのは、時間的余裕をもった受注やプロジェクト運営ができることなのだが、それができなくても打つ手はいろいろある、ということだ。
(参考:『いかに「時間」を戦略的に使うか』ダイヤモンド社)