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負け犬に終わらすな

「え~、先月の売上げは予算○○万円に対し、達成率102%の○○万円という、自分にとっての月間新記録を更新しました。ご支援、ありがとうございました。勝因としましては・・・・」

「そうか、山田君よくがんばった」と満足げな近藤社長。

「次にわたくし鈴木が報告します。残念ながら、予算△△万円のところ、それを△万円下回りました。達成率は88%となりました。その要因としては、長引く不況からくる経費削減など・・」

「ちょっと待て、鈴木君。あなたの未達成報告の内容は、毎月判で押したように一緒のことを話してるじゃないか」

「はぁ。申し訳ありません」

「はぁ、じゃないだろう。だいいち、長引く不況なんてもう去年で終わってるんだ。君のまわりだけが今も不況なのか?」

「・・・」

「黙っていちゃ分からん。なぜ未達成だったのか?その原因をどのように分析しているのかね」

「・・・、自分が甘かったとしか思えません」

「甘かった?それが分析のつもりなの?じゃあ今月はどのように行動するつもり」

「・・・。背水の陣で、石にかじりついてでも目標達成あるのみで参ります」

このような成果報告で始まったある会社の月次営業会議。近藤社長の依頼で会議にゲスト参加者したが、約束どおり約90分もの間、ほとんど黙っていた。そして会議終了後、社長とランチ。

「武沢さん、うちの会議はいかがでしたか。あんな感じで、出来る人材と出来ない人材の差が極端なのです。みんながみんな山田君のようにがんばってくれれば悩みはないのだが。現実は、鈴木君のように未達成社員が多くて。何か、打開策はないものでしょうか?」

「じゃぁ、気づいたことを少々」と前置きし、次のように申し上げた。
営業会議は、誉めたり叱ったりする場ではなく、達成・未達成の原因について踏みこんで議論する場にしたい。

・達成できたのはなぜか、今月はどのようにして目標を達成するか
・未達成に終わったのはなぜか?今月はどのようにして目標を達成するか

を本人も上司も納得しあった上で新しい月に挑みたいもの。
“甘かった”とか、”背水の陣”とか “石にかじりつく” などは精神論としては立派なことだが、それだけでは足りない。

「武沢さん、そのことなら重々承知しているつもりだ。だが、それが出来ていれば私は頭痛にならずに済む。会議の席で社員から出てくる反省といえば、精神論しかないから困っている」

社長が現状に妥協してはならない。嘆いてもならない。

ひとつの指導法でうまくいかないのなら、別の方法で。何度でもうまくいくまで粘り強く指導しよう。

例えば、目標未達成に終わった場合、本人を問いつめてはいけない。
検事と被告のような関係になってしまっては、建設的な議論ができなくなる。
一例として上司は、次のような質問を発すればよいのだ。

・目標値は妥当だったと思うか?
   昨年実績や最近の実績と比べて妥当であったか
・行動計画書は妥当だったと思うか?
   実行可能な具体的計画であったか
・障害を予知していたか?
   目標達成の妨げになる要因を事前に予測し対策を講じていたか
・中間チェック、ダブルチェックしていたか?
   期間中においてあらかじめ決めた頻度と方法で目標の進捗を確認していたか。自己チェックだけでなく、上司や仲間と相互チェックしていたか
・モティベーションは妥当だったと思うか?
   目標達成に対する情熱を維持していたか、モティベーションが低下したときでも、決めた行動はとっていたか

「なるほどぉ。武沢さん、少し手がかりが見えてきました」

「そうでしょ。未達成の原因を本人のせいにするのは後回しにしましょう。まずその前に、リーダーとしての指導法に改善すべき点がたくさんあるということです。
“目標達成率=計画力×計画実行力”なのです。また、
“計画実行力=計画着手力×計画完遂力”でもあるのです。
良い計画を作らせること、それをやらせ切ることが指導者の役目ではないでしょうか。社員の未達成問題を、口だけの反省に終わらせていては、彼らを負け犬にします」

「わかりました。明日、臨時会議を招集して新しい方法で営業の面々に接していこうと思います」