1月28日土曜日、正午。晴天ながら肌を刺すような冷気に覆われた京都。国立・京都国際会館には続々と人が詰めかけている。
40才以上のスーツに身を包んだビジネスピープルが多いようだ。
皆のお目当ては、発売三ヶ月で15万部を突破した話題作、『何のために生きるのか』(致知出版社)の出版記念講演&トークステージに登場する稲盛和夫氏と五木寛之氏のお二人だ。
出会った瞬間、稲盛氏が五木氏に「あなたとは以前から波長が合いそうな気がしていた。魂が似ている、ソウルメイトだ。ひょっとしたら前世では兄弟だったかも知れない」とまで評した。
そのお二人、私から見ても水と油の性格ながら、井戸の深いところでは通じ合っている何かがある。
「なるべく前の席に座りたい」という願いは参加者全員一緒のようで、案内状では13時開場となっているが、12時過ぎに開場入りした時には、すでに受付が始まっていた。
受講票を受け付けに差し出すと、「あっ」と係の方が私を最前列の招待者席まで案内して下さった。「いやぁ、こんなバックネット裏みたいな良い席をありがとう」と痛く感激した。ナマ稲盛、ナマ五木が真ん前でみられるなんて。
稲盛さんの講演が始まった。
小学校で結核を患い、イタズラっ子で勉強もしてこなかったので試験も就職も失敗続きの人生。戦時中の配給品やビンゴゲームのたぐいなど、ありとあらゆる抽選、ゲーム、賭け事には勝ったためしがない。
唯一誇れるのは、行事のときには必ずよいお天気になる「天気男」な所だけ。それ以外の面では、運とかツキとかは自分にまったく備わっていない、と思っていた人間がここまでやってこられた。それは、ひとえに良きことを思い、良きことを行ってきたからではないかと思う。
仏教では、悟りへの道として生きて成仏するための六つの修業を定めている。それを「六波羅密(ろくはらみつ)」といい、
・布施(ふせ)
・持戒(じかい)
・忍辱(にんにく)
・精進(しょうじん)
・禅定(ぜんじょう)
・智慧(ちえ)
の六つを説いている。
性格は変えられるし、運命も変えられる。いや、性格は成長とともに変わってゆかねばならないし、自分の性格に影響を及ぼすほどの良きことを行わねばならない。
余談だが、立派なお坊さんと言われている人や、すごい宗教家だと言われている人の中には、性格がおかしい人もいるが、それはおかしい。
知識や経験があるだけの人だ。
人の運命はその人の性格の中にある。性格が運命を決めるのだ。
1,100名の開場は水を打ったように静まりかえる。ひと言も聞き漏らすまいとするかのようであった。
次の五木さんの講演は一転して楽しかった。場内、爆笑のうずだ。
「メモなんかいいや、落語みたく聞こう」という気になる。聞き手を無防備にさせるのが最高にうまい。
講演を終えた稲盛さんが私の右6人向こう側で、体を揺すって大笑いしている。
五木氏の話は徐々に佳境に入る。
世の中あげてポジティブ、積極思考、陽転志向が正しい心構えとされる中、氏はあえて悲しむ、泣く、という心境のなかに柳のような折れない心が生まれると説く。
同郷の八女市(福岡)出身で、”郷土が生んだ英雄”として、黒木瞳、氷川きよし、ホリエモンを紹介しながら、「先ほどの稲盛さんの話をホリエモンに聞かせてやりたかった」。
さぁ、この貴重なイベント。3月に東京でもある。
致知出版社 http://www.chichi.co.jp/
『何のために生きるのか』(致知出版社)
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