山形のある経営者。
「武沢さん、経営者にはバランス感覚が大切だと思う。財務などの勉強をしながら、極端な攻めや極端な守りにならないよう注意している。中国古典にでてくる”中庸”とでも言うべきでしょうか」
そこで私は、次のようなことを申し上げた。
バランスとは何かを間違えないようにしよう。
経営者にとって真のバランスとは、両極の中間で均衡を保つことではなく、両極端を行き来できる能力だと思う。
ましてやこれから世の中に打って出ようという若々しい会社の場合、信長の桶狭間のように一点突破しなければならない時だってある。
そうなのだ。風呂の入り方と同じだ。
そこそこ程良い湯加減の風呂に長時間はいる人もいれば、高温のサウナと冷水浴を交互に繰り返す人もいる。心地良い入浴にも、いろいろな方法や組み合わせがあるということだ。
経営だって入浴法と同じところがある。
体調や好みによって入浴法を変えるように、経営も必要に応じて攻めと守りとその度合いをコントロールしよう。
京セラの稲盛さんは「位相」という言葉をつかって次のようなことを語っている。
打ち上げられたロケットは、大気圏を突破するまでの間はものすごいパワーを必要とする。だが、一端それを突破してしまえば、ほとんどエネルギーを必要としない宇宙空間に入れる。そこでは、大気圏よりも早いスピードで地球の周りをまわっているのだが、エネルギーは必要としない。経営も同じだ。「位相」に至るまでのエネルギーが永久に必要なのではないし、楽になれない経営者は、エネルギー量を決して下げてはならない。