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リーダーの変身能力

日本史上最大の急成長組織は、豊臣秀吉がつくりあげた豊臣家だといわれる。たしかに、農民のせがれが織田信長に仕えてから天下をとるまで、わずか30年なのだから、これを急成長組織といわずして何という。

それを可能にした要因のひとつに、いや、最大の要因だと私は思うが、秀吉自身の変身能力(成長)がある。
リーダーシップの取り方が見事に変化してきているのだ。

足軽頭(会社でいうと町工場)になったころ、部下は数十人いた。
そのときの秀吉(籐吉郎)は、皆とともに働き、汗を流し、共に喰って寝た。

やがて、墨俣築城のころになると、部下の人数が百人を超える。元気の良い中小企業という段階だろうか。この頃になると、部下を応援し、気持ちよく働いてもらうための人間心理を理解したリーダーシップを発揮しだす。

さらに、近江長浜の城主になるころには千人から三千人。竹中半兵衛や黒田官兵衛、加藤清正、石田三成などを召し抱えていく段階だが、ここまでくると、もう、組織の力だ。
仕組みや規則・規定などを整備し、事務官僚が組織運営の中枢をにぎるようにしていった。武人と文人が同居する組織だ。

秀吉は、会社の成長発展に応じて変化してくる自らの役割を知り尽くしていたかのように、変身してゆく。

ところで、戦国武将だけでなく、今の会社経営者にも必要なことは、
論功行賞の巧みさであろう。
ありあまる資金や財産があるならいざ知らず、乏しい中をやりくりしながら、部下の本気を引き出し、彼らの努力や成果にかなった恩賞を与える力は、リーダーの大切な裁量なのだ。

“戦国時代の恩賞”にスポットをあてて研究している経営コンサルタントがいる。私の友人でもある名古屋の北見昌朗氏だ。

氏は昨年、『織田信長の経営塾』(講談社)をヒットさせ、今年は『豊臣秀吉の経営塾』を送り出し、話題を集めている著者である。

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信長に秀吉、いろいろな著者が書き尽くしてきた人物でありながら、部下をどうマネジメントし、彼らにどうやって恩賞を与えたか、という切り口の著作は今まで一冊もなかったことだろう。

余談ながら、「天下布武」という信長の朱印まで再現し、自らも賃金管理の分野で「天下布武」を目指すという北見さん。多忙な日々の合間をぬって取材を重ね、毎週土曜日を執筆の日と決めてコツコツ原稿を書きためてきた作品だけあっていずれもが濃く、活き活きしている。

「うつけ」とは言われながらも、元々が殿様だった信長と、百姓のせがれだった秀吉とでは最初から部下との関係が違う。
だが、組織が成長していくにつれ、自らが変身していかざるを得なかったという点や、見事に変身する能力を発揮したという点で、戦国リーダーの勝者には共通点があるのだ。

あなたの変身能力に応じて組織の成長能力が決まるのだ。