未分類

才能を超えるもの

チョコレートを食べながら、映画『チャーリーとチョコレート工場』を見てきた。

http://wwws.warnerbros.co.jp/movies/chocolatefactory/ 

ジョニー・デップが扮するウォンカが経営する巨大なチョコレート工場に、5人の子どもたちが招待され、次々と驚くべき体験をしてゆく物語。ファンタジーでありながら、ブラック&シニカルな味付けもあって、少々アクの強いおとぎ話という映画。要所要所でみせるカラフルな映像は今でも脳裏に焼き付いている。

ウォンカ氏の秘密のチョコレート工場で働く小人たちの楽しそうな仕事ぶりも印象的だった。

私の自宅の近くにもお菓子のメーカーや問屋が沢山ある。名古屋といえば、祭礼などで菓子撒きをする風習があるせいか、昔から菓子づくりが盛んなのだ。

ある菓子工場では、工場内のBGMにお客(子ども)の声をながしている所がある。
毎年のイベントで子ども達にお菓子をプレゼントし、子ども達がそれをもらってうれしそうに、「ありがとう」、「ありがと!」、「ありがとうございます」、「ありがとございまちゅ」などと言う声を収録し、それを時々、場内放送するというのだ。

これはすごい発想だ。

作り手と受け手が商品を媒介として心がつながったとき、両者に感動が生まれる。
そうした感動をいだきながら、仕事をしていくと情熱が失せることがない。

情熱といえば、ある建築家がこんな話を聞かせてくれた。

「私が建築家の卵として社会人になったころ、早くもスランプになった。なぜなら、学生時代から飛び抜けて優秀な成績だったので、世間の建築家に対しても腹のどこかで『そんな程度か』と、なめていたのかも知れない。やがて建築そのものがつまらなくなっちゃって、違う道へ進もうとすら思い始めた」

だが、この建築家は、ある学術論文をみて自分の考えの甘さに気づく。

「ある日、建築家むけの専門誌を読んでいたら、恩師の一人が海外の建築事情を視察してきたときのレポートが掲載されていた。興味深く読み進めるうち、最後の結びのところにきて『ガッツーン』と頭をハンマーでなぐられる思いがした」

どんなハンマーパンチだったのだろう?

「この恩師の建築家は、外国人のある建築家のすぐれた仕事ぶりを評してこんな表現を使っていた。

『私に彼のような情熱が今あるか?と問われたら絶句するしかない』」

どういうこと?

「恩師は外国人建築家の”業績”や”才能”をほめたたえているのではなく、”情熱”をほめた。その論文を読んで、建築家にとって大切なのは情熱なんだという恩師のメッセージを僕は受け取った。当時の僕は、建築に対する情熱が失せていたが、それは周囲の人のせいでもないし、今担当しているプロジェクトがつまらないせいでもない。自分の内側にある建築に対する情熱不足が原因なんだと知った。あれから30年たつが、僕は建築に対する情熱を一度たりとも失ったことはない」

能力や才能を上回るもの、それが情熱なのだ。