未分類

仙台バスの顧客創造

昨日の続きに入る前に、ご紹介した仙台バス株式会社の猪股社長からメールが届いているので、その紹介から。

・・・
今日のメルマガの反応すごいです。アクセス数が倍増しました。地元宮城県からのアクセスが一番ですが、東京、福岡、大阪、愛知の順で多かったです。(都道府県レベルでアクセス元を識別できるアクセス解析ソフトを使ってます。)

メルマガでは、弊社のアンケート方法を取り上げて頂きましたが、実際には並行して、フリーペーパーへの広告、折り込みチラシ等いろいろ仕掛けてました。
(後略)

東北の貸切バスで初めて! 抗菌・消臭仕様車 導入しました。
仙台バス株式会社 http://www.senbus.co.jp 
・・・

「脱・下請け」というスローガンを掲げる会社が多いが、私は下請けそのものは全然悪いことではないと思う。問題なのは、価格や納期が発注者の言いなりになるしかない構造が問題なのだ。

それは、自前の企業努力によっていつでも顧客を創造できるノウハウを持っていないがゆえに、元請けにすべて依存せざるを得なくなっているのだ。そうした状態を脱し、自ら顧客創造したり、他にない独自の製品サービスをもつことで価格や納期に対するイニシアティブを奪回することが経営の独立宣言なのだ。

そうした意味でも仙台バスさんの試みとその勝利は学ぶに値する。
さて、

バスガイドが、旅行の最後に御礼あいさつをする際、座席シートに入れてあるアンケートの協力をお願いするのだ。
だが、これは単なる名簿集めのためのアンケートではない。同社の未来戦略に必要なデータにしたかった。だからアンケートの設計と回収法にはこだわりがあったのだ。

お客の氏名や住所といった属性をたくさん集めただけの名簿では、そのあと活用しづらい。どのような好みや嗜好があるのか、まで詳細に聞き出すアンケートハガキを作った。
しかも、今日のツアーについても改善のための意見や感想をたくさんあつめ、細かい点にまで改良を加えられるようにした。

猪股社長はこう語る。

「バス内でアンケート回収まで行うと、お客さんは良いことしか書いてくれない。我々が知りたいのは『よかった』とか『ありがとう』という声ではなく、本音の気持ちや意見なのです。だから、あえてハガキにして自宅に帰ってから書いてもらい投函していただく方法にこだわっているのです」

集まった名簿はすでに3000人近くに達する。しかも詳細なデータベース化がされており、
「陶芸体験ツアー」の募集には、陶芸ファンや参加型旅行ファンにDMを送る。
「伊達の正月は華やぎにあり 仙台のお雑煮体験ツアー」には、伊達ファン、食ファンにDMを送る、という具合だ。

そうしたきめ細かいマーケティグが可能になった結果、一回のDM告知だけで集客がほぼ完了することも多いという。

また、観光客の嗜好も変わってきた。かつては、観光名所を巡り、合間においしいものを食べてもらえば満足した。

だが最近は、そうした一般的な観光ニーズを満たす企画には反応しなくなったという。たしかに「松島」など観光名所には一回行けばもう十分だが、以下のような企画がずらりと並んでいれば、毎月一回、どれかに参加したくなるだろう。

11/1(火) 東北百名山 宮城禿岳(カムロダケ)
11/2(水) なめこ狩りと水沢温泉
11/4(金) 美肌の湯 東鳴子温泉
11/5(土) そばの里 山都町宮古で そば懐石を堪能
11/5(土) 三陸大船渡の魅力満載!!貝の不思議発見 獲れたてバーベキュー
11/11(金) 館ヶ森食材体感ツアー
11/12(土) 石巻-牡鹿半島 牡蠣の秘密も学んじゃおう!
11/14(月) 東北百名山 福島一切経山と家形山

もともとがNECの技術者だった猪股社長。製造業のP→D→C→Aという管理サイクルを扱うのはお手のもので、それを来る日も来る日も実践している。

自社企画のツアーを開催し、アンケートの結果をもとに、今後の企画や広告の売り文句に反映させ、次のツアーの募集・実施に役立てている。しかも、毎回、毎回、また毎回。

こうしたひたむきな企業努力が認められたのだろうか、幸運まで引きよせた。
楽天ゴールデンイーグルスの公式グッズを宮城球場内で販売する権利を取得したのだ。

このグッズ販売が同社の新たな「事業」と言えるかどうかは定かではない。しかし、少なくともそうしたオファーが舞い込む企業だということは、堂々と胸を張れることだと私は思う。

がんばれ仙台バス、がんばれ猪股社長、がんばれ顧客創造!

仙台バス http://www.senbus.co.jp