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95歳の”新星”

「武沢さん、元世界チャンピオンもそのパンチ力に驚いた75歳になる”おじさんボクサー”がテレビに出ていた。しかもボクシングを始めたのは5年前の70歳かららしい」

という話を聞いて驚いていたら、もっとビックリするニュースを昨日の日本経済新聞夕刊で見た。

「親父って足が速いなぁ」と長男に言われたのがきっかけで短距離走者の適性に気づいたという。その時、76歳。

あれから19年、短距離にしぼって鍛錬を積み、「95歳のカールルイス」と世界が認める100メートル走者になった。走るたびに世界新記録を連発する”期待の新星”アスリート原口幸三さん(95歳、宮崎市)だ。

原口さんは65歳のとき、健康維持を目的にジョギングを始めた。若いころ、陸上競技の経験があるわけではない。60歳を超えたあたりから十二指腸潰瘍を患ったり、風邪を引きやすくなるなど健康に問題が出はじめたので走り始めた。

仲間と走ることが楽しいから続けた。
そんな原口さんが短距離適性に気づいたのは意外な出来事から。大会最高齢の76歳で出場した5キロマラソン、ゴール直前でラストスパートした。
高齢ランナーのあまりの韋駄天ぶりに観客は拍手喝采。長男もビックリして「親父って足が速いなぁ」と認めた。
だが原口さんは、その日以降もマラソンは続けた。83歳になってようやく短距離に転向したという。

今年8月に開催された「全日本マスターズ陸上競技選手権大会」でも100メートル走95~99歳の部で、21秒69という世界記録を更新した。

原口さんは身長1メートル46、体重38~39キロ、体脂肪率9%の小柄筋肉質。トレーニングは主にウオーキングだ。
「朝は毎日。夕方は時々近所を1時間歩きます。散歩すると体調がわかる」と原口さん。雨の日は3キロのダンベルで鍛える。

「じいちゃんが80代のころ、正月に“今年の目標は?”と聞いたら“上半身を鍛えること”と答えたのでみな驚きましたね」と孫の剛さん(35歳)。

誰だって年を重ねると体力が落ちることを認めてしまう。たしかに若い時よりは落ちるのが自然の法則かもしれない。だが無防備で自然の法則のままに従っていると、法則以上に加速して老ける。
健康を維持するだけでなく、競技に挑戦し、自己実現を果たしていく生き様から学べることは多い。