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写経ならぬ・・

先日、ある人がこんなことを話してくれた。

「武沢さん、経文を書き写す作業を写経というが、私の場合、先月の決算書や今期の計画は何度もくりかえし書いている。去年までは手書きで書いていたが、最近パソコンにした。大切なことは、読み返すことよりも、書き直すことではないだろうか」

そうかもしれない。何度も繰り返し同じことを書くことには意味がある。
そういえば、私自身もこんな経験をした。

25年以上前、ライフワークという単語が流行した。その火付け役となったベストセラー本が『ライフワークの見つけ方』(井上富雄 著)である。この本、私にとって最初に読んだビジネス書でもあり、ものすごく印象深い。手に入るものならもう一度読んでみたい名著だ。

20代前半だった私は、この本を何度も何度も繰りかえし読んだ。
そして、男子たるもの気宇壮大に人生の青写真を描こう、そのためには人生25ヶ年ビジョンを作って自分のライフワークをもとう、ということを学んだ。

仕事を終えて深夜の独身アパートに戻り、大学ノートを開いて人生25ヶ年計画を何度も何度も作り直した。ワープロすらない時代だ。
毎日、消しゴムのかすでテーブルが真っ黒になるほど書いては消し、消しては書いてビジョンを作った。

シナリオAは、サラリーマンとして出世し、頂点である社長を目指すというもの。
シナリオBは、結婚までに独立して自分の会社をもち、事業を発展させるというもの。
それぞれのシナリオを細部にわたって考え、書いた。

結局私はシナリオBを選び、今もその路線を歩んでいるわけだが、時間だけは人生25ヶ年計画の終点まで来たわけだ。
残念ながらその当時のノートは残っていない。
だが、脳裏にはっきりと書式や中味を覚えている。それは、大変な手間ひまをかけて手作業で何度も作り直したからだ。


写経ならぬ、写目標、写計画、写決算、・・・。面白いと思う。