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続・中小企業の64%が後継者難

愛知県蒲郡市のA社は、実にスムーズに世代交代が行われた。

今から10年前、先代社長(53才)の営む会社に27才になる息子が武者修業を終えて入社し、互いに次のような約束を交わしたという。

息子はまだ世間知らずの若造だ。技能的にも人間的にも、とてもすぐに社長職をバトンタッチできるほどの技量をもっていると思えない。
また、息子の方も「オレにやらせろ」と言えるまでの自信がない。
そこで、今後10年間「専務」職として実質上の社長をやれ。そして、10年連続で経常利益4,000万円を突破したら、晴れてそのときに、名実ともに社長就任だ。

あれから10年経った。

今春、A社は見事な業績をあげながら社長交代を果たした。社内外からの抵抗もなければ、本人も社長就任にまったく不安がない、絵に描いたような円満世代交代劇だ。

だが、こうした例は稀だ。

「中小企業白書2005年版」(以下、「白書」)によれば、中小企業経営者の子供の49.5%が「親の会社を継承するつもりはない」と答えている。
「まだ考えていない」の14.3%を足すと、63.8%の会社で親族の継承が決まっていないことになる。

もちろんこの数字の中には、親が「我が子には継がせない」と決めているケースも入っているに違いない。だが、それを差し引いたとしても、なぜ子供が継ぎたくないのか、が問題だ。

「白書」によれば、親の事業を継承しない理由まで載っている。これは、ニッセイ基礎研究所の調査を転載したものだ。それによれば、

<親の事業を継承したくない理由>

第一位:親の事業に将来性・魅力がないから(45.8%)
第二位:自分には経営していく能力・資質がないから(36.0%)
第三位:今の仕事・企業等が好きだから(16.9%)
第四位:今の収入を維持できないから(13.9%)
第五位:雇用者の方が安定しているから(12.8%)
第六位:家族が反対するから(8.0%)
第七位:その他(15.0%)

となっている。実に気概に欠ける回答内容に失望するが、こうした回答しか寄せられない人物に経営を任す訳にはいかない。彼らなら、継がなくて正解だろう。

中小企業の経営者に、「我が子を会社に入れるべきか否か」と尋ねられたら私は、こう答えるだろう。

将来、株式公開を視野に入れているのならば「否」、そうでないならば「可」と答える。

ただし、世襲制の弊害は、無力な人物が経営を行うことにある。

株式公開する予定がなければ、さきにあげた蒲郡市のA社のように、長期的な視点からしっかり我が子を経営者として育成できれば、それが最善だろう。

そのためには、我が子からみても親の事業が魅力的に思えるものでなければならない。そのためにも、経営の理念や長期的な発展展望の絵を描かなければならないのだ。

我が子に経営ビジョンに語ることが、最高の後継者対策だと思うのだ。