会社経営の中で一番むずかしい問題は何だろうか?
資金繰りか、それとも人材育成か、はたまたビジネスモデル作りか?
いずれも難しい問題ではあるが、何度でも学習可能という意味では、ある問題より容易だと思う。
会社経営のなかで学習が出来ないものがひとつだけあるのだ。それは、“後継者育成”だ。これだけは、通常一回しか経験することがなく、しかも5~10年という長い期間を要するだけに、たいへん難しく、かつ重要なテーマなのだ。
任せたい人が見つかったと思っても、その本人が受ける気があるかどうか。能力や資質はどうか、また、実際上の経営権を持たせるために株や不動産などをどうやって委譲していくか、金融機関や主力取引先の意向はどうか、他の従業員との関係はどうか、などと考えていくと、2~3年でカタがつく問題ではないとわかるはずだ。
後継者問題は、遅くとも社長が55才までには大方の解決を得ておきたい。
経営のすべてをうまくやってきたのに、後継者育成だけがうまくいかずに結局は会社をどこかに売却することになったり、不出来な親族に渡したが故に何年かして破綻したりする例は枚挙にいとまがないのだ。
比較的うまくいった例が「中小企業白書2005年版」に載っていた。
・・・大阪の寝装品卸売企業のA社は、代表者が昭和32年に創業。当時は弱冠20代の働き者社長として信用を集め、創意工夫あふれる仕事ぶりが取引先から認められて好業績を維持し、ついには税務署から優良法人の表彰を受けるほどまでに安定した経営を行っていた。
だが、創業者も60歳を過ぎ、後継者を選びはじめたのだが、なかなか適任者が見つからない。代表者の長男は幼いころから教師志望であり、すでにその道を歩んでいた。二人の甥が社内で働いていたが、先代から株式の取得をするほどの資産や資金力がない。他の従業員を見回しても、経営者としてふさわしい人材がいなかった。
苦慮のすえ、同業他社に事業を譲渡した。幸い、良好な企業内容だったので、従業員の雇用なども完全に維持され、代表者も残った資産の活用方法を検討するほどの状況だという。
・・・
ひとまずバンバンザイという内容だ。
このケースは、会社が優良法人だったので買い主が表れたわけだが、もし優良法人でなかったらどうなるか?
実は、後継者問題がうまくいかなかった会社の81.9%は廃業・清算しているのだ。(中小企業総合事業団「小規模企業経営者の引退に関する実態調査 2003」より)
そして、残りの18.1%が他人や他社への譲渡なのだ。
事業を営む親を持つ子のうち、8.3%は「自分が承継することが決まっている」と回答し、「決まっていないがそのつもり」の9.7%と合わせても、社長の子供は18.0%の子供しか継承する意思がないという。
また、「自分以外の者が継承することが決まっている」の18.2%を合わせても、36.2%の会社でしか後継者は決まっていない。
残りの63.8%のうち、49.5%は「継承する意思なし」と回答している。
どうする。 <明日に続く予定>