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体験から何を学ぶか

数年前の話。
知人のAさんはコツコツ貯めたお金で、あるITベンチャーの株を買った。ビギナーズラックも手伝ってアレヨあれよという間に値上がりし、投資金額の数十倍にまでふくれあがった。時価換算で一億円近くまでになったらしい。

Aさんは毎日のようにヤフーファイナンスのサイトを見て一喜一憂し、増え続ける金融資産に夢心地だったという。

「仕事なんかしてる場合じゃない」

と思えるほど、毎日のように百万単位で資産が増えたり減ったりするのをサイトでながめている時期もあったそうだ。

その後相場は急落した。小刻みに売却していったものの、結局は買値の二倍ほどの1,500万円ほどで換金した。それでも立派な勝利だと思うが、一瞬でも一億まで迫ったあとの1,500万円では敗北感のほうが強いようで、Aさんは元気がない。彼はそれ以後、株式投資はやっていない。

大切なのは、こうした体験から何を学ぶかだ。次につながる学習にしなければ、せっかくの体験がムダになる。きっとAさんはこのように考えたのだろう。

・やっぱり一億はバブルだったんだ。不労所得で一億円なんて稼いでもろくなことにならない。自分にはこの結果で良かったんだ。

だから、Aさんは株式投資をやめた。それはそれで悪くないが、考え方は他にもたくさんあるはずだ。

このように考える人もいる。

「今回の投資では、銘柄選択では成功した。だが、売却場面では失敗した。なぜだろう、今後はどうすべきだろう」

このように考えれば次の投資で成功する可能性は高くなる。これは、株式投資だけの話しではない。体験を次につなげるための技法と習慣の話しなのだ。

成功には失敗がつきもののようだ。

時は明治。
借金で投資した株式が大暴落にあい全財産を失ったが、「なにさこれくらい。雲らば曇れ、晴れる日もある」と飄々としていた男がいた。
後に根津財閥を築きあげる根津嘉一郎である。
彼は積極一本槍の自分の戦略を相場の失敗から反省した。強気一本の姿勢を反省し、のちに有名になった「内に消極、外に積極」戦略の芽ばえである。

<明日につづく>