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株式公開する志

来年の株式公開に向けて着々と準備作業をすすめるA社長と夕食をご一緒した。業界初の公開企業となる今の心境を尋ねると、

「武沢さん、たしかに証券会社なども業界初に意味があるとおっしゃるが、私からみれば、公開企業にするという志を持つのにちょっと時間をかけすぎた。もっと早くから公開企業になるというビジョンを持っていれば大幅に時間を短縮できたと思う」と言う。

ボタンのかけ違いならぬ、経営のやりかたの違いが公開するか否かであるというのだ。一例として、会社を強靱な体質にするのが先なのか、社長の個人資産を優先させるのかという問題がある。もし後者ならば、会社を守るのは社長の資産なので、少しでも会社には利益を残さずに社長の個人資産を厚くすることを優先させる。当然ながら、税金も払わずに済む方法を考えるだろう。
また、前者であれば、その逆になる。それを途中から軌道修正すると、その分だけ余分な年月を要するというのだ。

株式公開するタイミングとして最もふさわしいのは、成長の青写真が描けるときである。今さらサントリーや読売新聞が上場するといってもプレミアム(期待値)が付く余地は小さい。すでに安定成長期に入った企業だからだ。

世間一般では無名の会社ながら、毎年3千万以上の利益をコンスタントに出しているところは無数にある。なかには一億円以上の経常利益を出している会社だって少なくない。
それらの会社では、公開企業になることを検討されてはいかがだろう。

考え方としては、成長している、儲かっている、だから株式公開する、というのではなく、成長したい、儲かりたい、だから株式公開するという発想が必要だろう。
関心のある方は、『成長するための株式公開入門』が好著だと思う。
(中桐則昭著、日本能率協会刊)
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