『成長するものだけが生き残る』(上原春男著 サンマーク出版)を昨日ご紹介した。今日もその続きをおとどけしようと思うが、まずこんなニュースからご紹介しておきたい。
ちょうど一週間前の2月1日、大手新聞紙の多くが沖ノ島周辺の発電所構想について報じた。
東京新聞は一面トップ記事に、日経新聞は二面、読売や産経も囲み記事や地図入り記事などで大きく報道している。日本の排他的経済水域を航行する中国に対して、牽制の意味もこめた報道なのだが、このニュースのユニークな点はそれだけではない。
この発電所構想は、石原東京都知事が小泉首相に伝えたもので、発電方法が夢のようなものなのだ。それは、海洋の温度差を利用した「海洋温度差発電」というもので、佐賀大学の上原春男教授が開発した「ウエハラサイクル」を利用するというもの。
検索サイトのGoogleで「ウエハラサイクル」を調べると218件がヒットした。
ウエハラサイクル http://www.xenesys.com/japanese/uehara-cycle/
その上原春男氏が今月リリースしたビジネス書が、『成長するものだけが生き残る』であり、すでにamazonでも相当上位にきているようだ。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/476319593X/
スラッと読めてしまうので、拍子抜けしたような感じになるが、それは氏の平明な文章力によるもの。内容は玩味熟読すべきものだと思う。
そもそもひとつの製品やサービスにはライフサイクルという寿命の曲線がある。つまり単一ビジネスでの成長には限界がある。組織全体として成長の限界を突破し、世代を超えて成長し続けるためには何が必要か。
まずは、リーダーの心構えだと作者は言う。自己満足を否定し、もっと良くなるための目標や新しいものごとへの挑戦が必要なのは言うまでもない。時には、我社を時代遅れにするのは我社なんだ、という気概も必要だろう。
人間がサルから進化した大きな要因は、道具を使った点であり、自分が持っているもの以外のエネルギーを上手に利用できるようになった点にあると作者はいう。その素直な原則に照らし合わせてみたとき、
・節約と称して必要な電気や電源を落とす
・冷暖房の使用を必要以上に制限する
・コピー用紙の裏側を再利用する
などを誇らしげにやっている企業では伸びないと言う。
そんなことにうつつを抜かすよりも、大きな目標を掲げろと訴える。
大目標を掲げられない組織は成長しない、とまで言い切っている。経営コンサルタントが言うのではなく、学術と教育の道だけを歩んできたうえでの結論がそれであり、企業経営においてもまったく当てはまるところが面白い。
この本に出てくる言葉に「デタラメ度」というものがある。前例や他社事例、それに常識や定石にとらわれない柔軟な姿勢だ。一見デタラメのようでいて、全体としては正しいというものの見方ができるかどうかも重要なファクターなのだ。
逆の言葉では、「理路整然度」だろう。国も企業も家庭も、理路整然度だけではうまくいかないことを証明してきた。
いかにデタラメを上手にマネジメントできるかどうか、も考えさせられる本だ。脳ミソに刺激をくれる本だ。
『成長するものだけが生き残る』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/476319593X/