従業員100名規模の金属加工業を営むS社長(51才)は、先代のあとを継いで5年目になる。
武沢:「経営の調子はどうですか?」
S:「おかげさまで先代が非常に堅実な経営をやってきたおかげで、財務体質には何一つ問題がありません。無借金で経営できているということは、今の時代、ものすごく武器になっていると思います」
武沢:「それは素晴らしいですね。社長就任後の5年間でいちばんご苦労されたことは何ですか?」
と尋ねると、客先である相手側も、売り手であるこちら側も世代交代によって人間関係が希薄になり、ビジネスライクになりつつあるという返事がかえってきた。
先代社長の人間力や個人的信頼関係みたいなものが今は通じない。
純粋に商品の良し悪し、価格の競争力、サービスの満足度が問われる。
うっかりしようものなら、永年のお客も一瞬で去っていく。
「先代のような魅力的な人間性は私にはマネできない」
と早くから気づいていたS社長は、純粋に商品やサービスで勝負しようと決意していたという。
このS社長の会社、今は非常にうまく行っているようだが、未来が保証されている訳ではない。先週、真剣に私の講座に通って下さり、誰にも負けないほど沢山のメモをとっておられた。
あなたの会社では、社長個人の人間力で売れているのか、それとも純粋に商品・サービスの魅力で売れているのか、どう判断するだろう。その両方で売れている場合が多いと思うが、社長個人の人間力を差し引いて評価し直す必要がある。