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続・付加価値とは存在価値

(きのうの続き)

武沢商店は「がんばれ茶!」の単品経営をしている。一ヶ月に1万本売っているので損益計算書はこのようになっていた。

売上高  150万円(150円×1万本)
仕入れ  60万円
粗利益  90万円
経費   70万円
営業利益 20万円

決して悪くない業績だ。もっと売り上げを伸ばそうという気はあるが、このまま業績が安定してくれていれば幸せだったのに・・・。

環境の変化は早い。「がんばれ茶!」も来月から20円値下げして130円で販売せざるを得なくなった。おまけに仕入れは60円のままだ。さらに、ライバル社数社が類似商品「やる気ウーロン茶!」や「テンションドリンク」などを発売。消費者から見れば一気に選択肢が増えてウレシイだろうが、こちらとしては今までの売上高や販売数量の維持は相当厳しくなってきた。

「え、うそだろ!」と電卓をはじいた武沢社長はビックリした。試算してみると赤字になるのだ。単価が130円に下がり、尚かつ売上本数も現状の1万本から9,000本程度に下がる危険性がある。
その時の損益計算書はこうなる。

売上高  117万円(130円×9千本)
仕入れ   54万円
粗利益   63万円
経費    70万円
営業利益 ▲7万円

赤字になるのは何が原因か。
結果で言えば、売上の単価と数量の両方が下がったことが問題だ。原因で言えば、競争環境の激化だ。つまり同じような付加価値を提供する他社製品が増えたことや、消費の冷え込みでボトル茶に対する財布のヒモが固くなったからである。

対策はどうしよう?

武沢商店の事業計画書では、「毎年10%以上の利益成長を遂げる」とある。おまけに出資者でもある株主に対しては、毎年増配するという努力目標を掲げている。なのにこのままでは、赤字決算で無配転落するではないか。

対策案1.経費削減
何が何でも赤字は回避するため、給料カットを含めた経費削減計画を作り、即時実行する。

対策案2.販売増強

9千本という販売数量を1万本以上に伸ばすために、販売促進計画を作る。おそらく同業他社も販売促進攻勢をかけてくるに違いない。こちらだって、今まで以上に積極的にやろう。

チラシ、DM、FAX、看板、メール、セール、キャンペーン、イベント企画、紹介制度、ホームページ、メルマガ、会員制度、飛込み訪問、ハンドビラ、ポスティング、試飲会、地域イベントへの試供品提供、

 ・・・いろいろやる。うまくいったものを残す。

対策案3.粗利益率向上

メーカーと交渉し、「がんばれ茶!」の仕入金額60円を下げてもらうようかけあう。
すんなりと価格引き下げに応じるとも思えないので、販売数量に応じたバックマージン契約なども提案する。

武沢商店は、その後、二ヶ月だけ赤字を出したがそれ以後は回復し、今では過去最高の決算をだした。そう思うと、受難も決して悪くない。

だが、会社の存在価値とは、付加した価値だ。つまりそれは粗利益に表れる。従来と同じ仕事を同じやり方でやっていては、付加価値は下がることはあっても上がることはない。

毎年・毎四半期・毎月のように粗利益を向上させる取り組みをしていけば、受難がなくても自律成長することができるのだ。