(ひょっとしたら)私は特別な人間だ。
特別にカッコ良いし、特別に長生きしそうだし、特別な金持ちになりそうだし、歴史に名を残すような特別な可能性をもっている、と密かに皆がそう思っている。“密かに”ではなく、真剣にそう思っている人も多い。
そう思うことが正しいし、皆がそう思うように応援してあげるのが経営者の役目ではないだろうか。
ある所に二人の医者がいた。Aという医者は、頭痛薬を患者に渡すとき、必ずこう言った。
「このクスリを飲めば必ずあなたは良くなります」
Bという医者は、ものすごく几帳面なタイプだったので、こう言った。「このクスリがあなたに効く可能性は、データに基づくかぎり60%です。また、遺憾ながらあなたに効かず、副作用が出てしまう危険性も25%前後あります」
患者を前にした医師として、どちらが腕が良いか。
それは、Aだろう。
では、どちらが正確な医師か。
それはBだ。
ではどちらが高いIQをもっているか。
それはわからない。
“正確さ”と“腕の良さ”と“IQ”は一緒ではない。大切なのは、“正確さを背景にした腕の良さ”であり、顧客に勇気と確信を与える能力と言葉を持つことだ。
「あなたは出来る」、「あなたは治る」、「あなたは良くなる」と。
口の悪い人たちは、これをペテン師性とも詐欺師性とも言う。言い切る能力、信じ込ませる才能という面で似てはいるが、似て非なるもの。
動機の善悪において、これらの人々とまったく一線を画すものだろう。
腕の良い経営コンサルタントは、赤字だらけのクライアント社長の前でこう断言する。
「社長、僕の言う通りにやって下さい。必ず儲かるようになりますから。」
「本当かい」と確認する。
「信じて下さい」
「わかった、あなたを信じよう」
そう言う社長の目に輝きが生まれる。それはコンサルタントを信頼したのではなく、自分と自社の未来を信頼できた瞬間なのだ。
こうした言葉の威力と魔力を最も必要としているのは自分自身だ。
自分の中の自分、つまり潜在意識に向かって力づよく明るい未来を断言してあげよう。
「私がうまくいく可能性は65%」などと真面目に表現するよりは、
「私の前に不可能の文字はない」と断言するほうが“腕が良い”のだ。