★テーマ別★

言葉づかい

ジワジワ成功した、という話しは滅多に聞かない。成功するときは、突然、しかも一気にうまく行きだす。
もちろん、日頃の努力や練習がベースとなっているわけだが、突如それらの蓄積が周囲の要請にマッチし、開花する。あとは早い。

問題は、うまくいきだした後の次の手だ。ここでビビったり酔ったりしていては、小さい成功で終わる。たまには、元に戻っていってしまうこともある。

私は中学一年生の夏休み、突如自転車に乗れるようになった。
小学校五年生で自転車を買ってもらったが、練習しても乗れない日々が続いた。それほど乗りたいという気持ちもなかったのか、たまにしか練習しない。あっという間に中学生になっていた。

ある夏休み、親戚のおじさんが自転車練習につきあってくれた。
「信行君、今日のうちに乗れるようになるぞ」

校庭で練習すること二時間、後ろで支えてくれていたおじさんがいないのに、スイスイと乗っている自分がいた。
「ウワァ」とさけびながら、まるで海の上を漕いでいるような気分だった。それは、気持ちよさと恐さとが同居していた。

「こんなこと長く続くわけがない」と心の中でつぶやいた。すると、三秒後に転倒し、すりむいた。結局、その日は二度と乗れず、自転車を引いて家にもどった。

その晩、夢にみた。スイスイと自転車を漕いでいる。今度は校庭ではなく、道路を走っている自分がいる。脇見しながら鼻歌気分で自転車に乗っている。

翌朝、校庭へ行かずに家の前で練習した。もちろん乗れた。
自転車に乗れる自分を恐がるのではなく、自転車を楽しむ自分を受け入れよう。うまく行くのが当然だ、成功するのが当然だ、と思うことが大切なのだ。

ヤンキースのゴジラ松井が活躍すればチームが勝ち、ノーヒットだと勝てない、という四番らしさを発揮している。だが、その四番松井が正真正銘の四番と言えるだろうか?

私は現時点では、「否」だと思う。メンタルアティチュード、つまり心構えが四番になっていない。それは発言を聞いていれば一目瞭然なのだ。

五安打、二本塁打、五打点という大活躍をした試合の後、記者会見で松井選手はアメリカ人記者に「今の気持ちを英語で言うと?」と聞かれ、ちょっと考えてから「アンビリーバブル(信じられない)」と回答した。それが彼らしいジョークとも受け取れるが、いつわらざる気持ちでもあるだろう。

だが、ここでこそ一発、四番はオレだと、自他ともに認めさせる発言をしてほしかった。
「今の気持ち?普段通りで気持ちいいよ」

今日の第六戦を前にして、日本の新聞記者に向かって松井選手は、「シリング投手は前回は不本意な投球だったので、今回はいい投球をしてくるはず」と予言していた。
今回は打てないかも知れない、という予感が今日、的中した格好になる。

口から出す言葉は実現する。心の映像も実現する。