「武沢さん、うちの会社では営業と技術がどうも仲が悪い。これは伝統的なものとしか言いようがない。人事異動などでかき回しているのだが、それでも良くならない。どうしたらよいか?」大手楽器メーカーの部品を製造している社長の嘆き節だ。
これは人事異動の問題ではない。社風を作りかえるという大きなテーマである。
もともと、営業部門と技術部門は仲が悪いことが多い。それは、責任感のよりどころが異なるからだ。
営業は、顧客からのリクエストを反映することが大切だと考えている。技術は、納期やコスト、生産スケジュールなどをやりくりすることが大切だと考えている。双方の意思疎通が充分でないと、感情的なやりとりになりかねない。
経営用語のひとつに、「プロダクトアウトからマーケットインへ」というものがある。主に製品開発分野で使われるものだ。プロダクトアウトとは、作る側の視点で仕事を進めること。マーケットインとは、顧客の意向を反映して仕事を行うことである。
従来の製品よりも品質を高め、値段も下げたのに、それでも全然売れないということはよくあることだ。売れない理由など見あたらないのに売れないのだ。技術部門にしてみれば、営業の力不足を指摘したくなる。営業部門にしてみれば、技術部門にさらなる努力を要求するしかない。いずれにしろ、「敵は社内」ということだ。こうした事を何年くり返してきても、問題が根本から解決するはずがない。
そもそも、「良い品を安く提供すれば売れないわけがない」という考え方そのものが、独りよがりの発想だ。作り手の思いこみによるプロダクトアウト発想なのだ。マーケットインの発想をもちたいものだ。それには、お寿司のように「並」と「上」がある。
「並」・・・顧客の意見や要望を取り入れそれに対応する
「上」・・・顧客のニーズをくみ上げ、先回りして提案する
「並」のことをやっている会社を顧客対応型企業とよぶ。「上」のことが出来ていれば、それは顧客創造型企業だ。
「事業の目的は顧客の創造である」(ドラッカー)という観点からみれば、マーケットイン型の企業の中でも、「上」の仕事が組織的に行われている会社が勝ち残ることになるはずだ。