ドラッカーは、「リーダーシップとは仕事そのものであり、一貫性のことである」と語っています。今日の言葉の神谷氏が、誠意が最大の武器だと語っているのとどこか似たニュアンスがある。
さて、昨日の続き。
会社は、売上げの成長、客先の拡大などを通して社内の実力も向上していくものだ。実力が向上したから売上げが伸び始めるのではない。
先週金曜日放映のNHK「21世紀ビジネス塾」によれば、下請け中小企業の最大の問題は売上高の不足という調査結果が出ていた。当然、経営課題の第一番目は営業力の強化ということになる。
日本の経済が高度発展を遂げている時代には、中小製造業者の多くは、営業マン不在でも仕事が順調に拡大した。社長は工場長と同じような仕事をしていても何とかなった。
だが、今では例外なく、社長には社長の仕事をしてもらう時代になっている。
大阪の「国誉アルミ製作所」も炊飯器の釜などを作っていたが、じわじわと売上げが減り、とうとうピークの半分になり赤字転落した。危機感を感じた村上社長(現・会長)は、みずから軽トラックに乗ってやみくもに営業攻勢をかけてみたが、結果が出ない。
「営業力不足という当社の弱点を補うためには、営業のプロが必要だ」と腹を固め、50人以上の人材と面接。とうとう境田氏(現・社長)と出会う。彼をいかに口説くかを真剣に考えた村上社長は、当時珍しかったスピニングマシンを導入し、境田氏にこう約束する。
「うちはこのマシンのおかげで何でも作れる会社になった。あなたは何を受注してきてもよい。会社を変えるのを手伝ってほしい」と夢を語る。そして、ついに熱意が通じる。
社内の人材を営業に回すのではなく、社外から営業部長を引っ張ってくることは奇策ではあるが、場合によって正しい。
なぜなら、既存社員では思いこみが強すぎる懸念があるからだ。
・うちの機械ではそんな部品つくれない
・うちの技術ではむりだ
・うちの規模ではあんなに大きな会社と取り引きできない
・・・etc.
勝手に自分たちの限界を決めつけているのは既存社員であり、外部から来た人材には、そうした思いこみがない。
一枚のアルミ板からラグビーボールのような形状のものまで作れる。そうした試作品群を持って、わずかの間に多数のメーカーを回った境田氏は、ある掃除機メーカーと出会う。この会社では、特殊な掃除機ボディの開発図面をもっていたが、それは下請け製造業者の間をたらい回しになっている問題案件でもあった。
短い納期に安いコスト、社長の村上さんも、「採算があわない」と判断した。だが、境田氏は、「これこそチャンス、これをやることで我社もクローズアップされる」と説得。
見事にこの仕事をやり遂げた国誉アルミ製作所は、「複雑でスピードがいる仕事を正確に早くやる会社」という評価を得るにいたり、一躍大手メーカー間で有名な存在になる。
営業部門が強くなると、製造現場の社員も客先同行させることで現場もレベルアップする。そうした取り組みの結果、境田氏と出会う以前よりも売上げを10倍にすることが出来た、という話だ。
また、金型を売りわたすこともやめた。技術ノウハウがつまったものを金型代としてメーカーから受け取るのをやめ、自社負担で金型を開発することにした。金型をもっていることで、競争優位性を保つ戦略だ。それが次の仕事にもつながっていった。それは、強い営業力によって可能になったわけだ。
「何とかお願いします」とメーカーから言われるような下請け企業を目指そう。そのために出来ることは沢山ある。中小企業の経営自立化は国をあげて支援しているテーマでもあり、事例や情報に事欠かない。勉強し、挑戦しよう。