ある下請け零細製造業者の嘆き。
「メーカーの横暴はひどいもんですよ、武沢さん。この前なんかね、『この部品を三週間以内に2000個納品、単価は一個14円80銭。イエスかノーか』という感じで連絡がくる。そんな単価じゃ機械の償却費もでない。だからと言って、『ノー』と言えば、次から仕事が回ってくる順番があとになる。この現状を打破するには何をすればいい?」
こうした話は何度も聞いてきたが、いつまで嘆き節を言っているかによって企業間格差が付いている。メーカーが悪いわけではない。力関係の改善をすべく、どのような努力をしていかが勝負。嘆いているだけの社長と、勉強して手を打っている社長との間には、日々確実に格差がついているのだ。
一番大切な問題は、社長に、現状を打破し会社をより良くしていこうという決意や覚悟が本当にあるのか、ということだ。誰だって勝利を夢見るが、勝利を手にするために戦う覚悟が本当に備わっているかどうかは別問題なのだ。まずはどんな覚悟がいるのかを知っておかねばなるまい。
そんな中、先週金曜日・土曜日の二日間、埼玉県中小企業振興公社主催による「彩の国自立化塾セミナー」の最後の二講座を受け持った。
全国に先駆け、埼玉・広島・長野など6県下の公社で開催されたこの企画は来年度(4月)以降、国の予算援助を得つつ、全都道府県でも開催されることが決まっている。
※ちなみに、今回の6県だけは国の予算を先に使ってのパイロット開催をしたため、来年度の開催予定がないとお聞きした。
さて、私に与えられたテーマは、「脱・下請のための自立化計画の立案(前編&後編)」という単元だ。30数ページのテキストを用意し、次のカリキュラムで行った。
初日 2/6(金)
・9:30~11:10:第一講座『オリエンテーション』
・講師自己紹介と講座の概要説明
・「脱・下請け」戦略とは
・「がんばれ社長!流経営力チェックシート」で自社チェック
・グループ討議:チェックシートで見つけた課題と、受講目的明確化
・11:10~11:20 休憩
・11:20~12:00:第二講座『経営課題リスト』に書きためよ!・説明と作業、コンクール(上位3名著書プレゼント)
・12:00~12:30 第三講座『偉大ゾーン』チェックリスト
・12:30~13:30:食事・休憩
・13:30~16:30 第四講座『マーケティングに関する方針づくり』・今のままで勝つために
二日目 2/7(土)
・9:30~11:20 第五講座『内部体制に関する方針づくり』
・企業は人なり、利は管理にあり
・11:20~11:30 休憩
・11:30~12:30 第六講座『経営者の自己成長と習慣改善に関する方針』
・主義や理念以上に価値あるもの、それは社長の習慣
・12:30~13:30 食事・休憩
・13:30~15:30 第七講座『自立獲得とオンリーワン企業作り10カ年ビジョン』
・15:30~15:40 休憩
・15:40~16:00 むすびメッセージ『大切なのは、熱狂的状況』
・16:00~18:00 解団式と懇親会
出席者全員から絶大な支持や感謝を頂戴した今講座だが、私は冒頭で、「なぜ下請けがいけないのか?」と出席者に質問してみた。皆さん怪訝な顔をしておられたので、私は続けた。
「下請けそのものが悪いという意識をぬぐい去ろう。そうしないと、単純に元請けを目指そう、というだけの発想になってしまい、経営のかじ取りを誤りかねない」というお話しをした。
従って「脱・下請け戦略」の本質は、価格と納期の決定権を発注主から略奪することにある。だが、完全略奪して殿様商売をめざす必要もない。発注主も下請け側も、ともにパートナーとして肩をならべて仕事をすることを目指そう、と。
だって、日本の製造業の大半が下請けだ。デンソーだってアイシンだって京セラだって今でも下請けだ。だが、なくてはならないスーパー下請けだ。もちろん価格や納期決定の主導権も握っている。こうした存在を目指すことこ脱下請け戦略の根幹テーマだ。
やるべきことは二つある。一つは、今のままで勝つことを考えるのだ。同時進行ですすめるべきあとの一つのことは、独自製品や独自技術、独自サービスを作るための取り組みをすることだ。
まず一つめの今のままで勝つということに関して。今の製品、今の機械、今の人材、今の財務体質などすべてが今のままで良いのだ。ただ一点、営業力を強化することである。中小零細企業の多くは営業マンすらいない。社長が納品や集金の片手間に受注活動を行っているにすぎない。これでは永久に価格決定の主導権を握ることはできないのだ。
営業専任者、しかもプロレベルの人材を採用する必要性について、2/6(金)の早朝、NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」が興味深かった。
大阪の国誉アルミ製作所のものの見事な売上げ10倍秘話をご覧になった方も多いと思う。
<明日につづく>