30代の若手コンサルタントとミーティングした。私の小説のことに話題が及ぶと彼女はこう言った。
「武沢さんは小売業や製造業という実業に就いておられたから、経営の生々しい小説が書ける。私はずっと事務部門やネット部門にいたので、経営の現場というものを知らない。だからああした小説は私には書けない」
書ける、書けないの問題はさておき、ひとつだけ彼女の考えを正した。それは、昔と今とでは経営の現場が変わってきているということである。
私が生まれた昭和 29年(1954年)頃というと、日本のトップ産業は農業、漁業、林業など、いわゆる第一次産業だった。それが全体の 40%を占めていたのである。その次に、35%を占めていた三次産業で、飲食や小売業などのサービス業。その次が二次産業の製造業や建設業で、全体の 25%ほどと、三つの産業がほぼ拮抗(きっこう)していた。
ところが 60年経過した、来年(2015年)の産業構造見通しは、
1位:三次産業(71%)
2位:二次産業(25%)
3位:一次産業( 4%)
となり、大きな構造変化が起きたことが分かる。
一番大きくなり、成長率も高いのが第三次産業である。
情報通信、小売、卸売、飲食、宿泊、運輸、金融、不動産、学術、教育、専門サービス、生活関連サービス、娯楽、医療、福祉、それ以外のサービス、など市場全体が膨らんだ。もっと細かく分けないと、71%もあると何が何だか分からなくなることから、「第六次産業」まで言葉として存在するが、政府の統計は三次産業までとなっている。
さて、冒頭の問題。
三次産業の増加はおのずと知識労働者(オフィスワーカー)の増加をもたらした。現場がオフィスなのである。多くの会社ではすでにオフィスが経営の現場になっている。なので、「経営の現場を知らない」という自己評価は当たらない。そんなご指摘をした。
ただ、もうひとつ言えることは、経営の現場の定義を「経営者に近いところ」ととらえると話はまた違ってくる。
参考:産業別就業者数の推移
→ http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5240.html