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競争の脅威

報道によれば景気が回復基調だという。それを受けて、株価も今年5月の8,000円割れから40%ほど上昇してきた。

だが一方では、この現象は国内景気の回復というよりも、堅調な米国や中国などを取引相手にする一部の大企業にかたよった回復であり、国内経済の足元はいぜんとして弱いとの見方もある。いずれにしろ、まだまだ予断を許さない。

さて、以上はあくまで一般論。大切なのは、あなたの会社が良くなることだ。
「事業とは顧客を創造することである」とドラッカーは言い切ったが、私はこの言葉が好きで、たびたび講演会などでもご紹介している。


・・・顧客を創造する・・・

いかなる業種・業態であったとしても、積極的に顧客を創造するという意気込みと、その必然性を作っていく必要があるのだ。

顧客を創造しないとどうなるか。それは、現状維持ではなく、お客は減ってゆく一方だ、という結末である。
何年もの間、同じ製品・サービスを同じような値段で提供し続けていたらどうなるかは明々白々だろう。

なぜ放置すればお客や売上げが減るのか。それは、同業他社にお客が奪われるからだけではない。
昔から、「男は一歩外へ出たら七人の敵がいる」と言われているが、私に言わせれば、「会社は一歩外へ出たら五人の敵がいる」なのだ。

著名なコンサルタント、マイケル・ポーターは、名著『競争の戦略』のなかにおいて、企業をとりまく競争要因を次の五つ指摘している。

1.業者間の敵対関係
2.新規参入の脅威
3.代替品・代替サービスの脅威
4.顧客の交渉力
5.供給業者の交渉力

業界内の業者間競争だけがライバルではない。上記五つのすべてが競争相手であり、しかも状況次第ではどれがわが社の真正面に表れるかわからないのだ。

たとえば、

・ある印刷会社は、価格破壊をウリモノにする同業他社のやり方に憤りを感じつつも1番の脅威からは逃れられていない。
・私の友人のコンビニオーナーは、近くに他社が出店してこないかという2番の脅威にいつもさらされている。
・デジカメ製造会社は、カメラ内蔵携帯電話に取って代わられるという3番の脅威を感じている。
・大手自動車メーカーの部品を作る製造会社は、たえず4番の脅威にさらされている。
・中東の原油相場によって大きく業績が変動する石油会社や電力会社は、いつも5番の脅威にさらされている。

このように、油断もスキもないのだ。よって、ディフェンスしつつも、オフェンシブにかつ積極的にあなたが顧客を創造してゆこう。そのための競争戦略や、その具体策をもつ必要がある。

ざっとこんな話を昨晩、ある居酒屋チェーンの社長にお話ししたところ、思わぬ反応が返ってきた。

「武沢さん、私もポーターの本はひととおり読んでるから知っているが、未来のことを今から脅威に思っていてもしようがないじゃん。だって、来年どんな新規業者が表れるか、どんな代替品が出現するのか誰も予測つかないでしょう。だったら、自分たちのやるべきことをきっちりとやってゆくしか仕様がないんじゃない?」


たしかにその通りなのだが、その言い方に問題がある。一人の商売人から、顧客創造をなりわいとする事業家になるためには、もう少し緻密な思考回路と表現力を身につけてほしいのだ。

<来週につづく>