●かのドラッカー教授は、“マーケティングと絶えざるイノベーション(改革)が企業の二大テーマだ”と説いた。そのイノベーションができるかできないかは、成長性や社内の躍動感という点で顕著な差となって表れる。
●成長している会社では、社長も含めた社員全員の仕事が年々変化する。その変化に対応しようと、社員は必死になって努力するわけで、会社が成長しないわけがない。
●三年前、一年前、そして今日、仕事の内容がどの程度変わってきているかが勝負。それをイノベーションというのだ。誰もが今やっている仕事をいち早く卒業し、次の次元の仕事に進もう。みんな揃って去年も今年も同じ仕事をしているようでは成長しない。
●規模で表現すれば、会社は個人事業→零細企業→小企業→中堅企業→大企業→世界的企業という形で進化する。
質的に表現すれば、会社が提供するサービスや製品は、並以下→並→上→特上という形で進化する。
こうした進化の過程では、次のようにイノベーション(改革)が進む。
第一段階(個人の時代)
社長が主役。社長一人がすばらしい仕事をする段階。社長がいかに有名になり、ブランド化するかが勝負。
第二段階(組織の時代)
社長一人ではなく、社員も含めて組織全体が提供するものが主役になる段階。いかに会社自体をブランド化できるかが勝負。
第三段階(思想と文化の時代)
会社の思想や文化が主役になり、ウリモノになる段階。社員も顧客もその会社が好き、そのブランドが大好きという段階。
●さらには最近になって、この私の理論に対してアンチテーゼとなる経営モデルが出現した。その会社は、
「いかに早く、会社そのものをつぶしてしまうかが勝負」というモデルに挑んでいるという、驚くべき経営思想だ。
社長が作った今の会社は、あくまで社員が独立と自由を勝ち取るためのフィールドに過ぎず、みんなが巣立っていったあとは社長とともにこの会社は消滅するという構想だ。皮肉なことにこの会社、アイデアが社員に支持されて、毎年すさまじい勢いで規模も質も成長しているという。
●この会社の場合、もともと長期にわたって存続させる目的ではないので、毎期毎期の利益はすべて全員で分配する。その結果、会社の内部留保はほとんどない。内部留保がないと借り入れもままならない。そこで、どうしてもまとまった金額の投資が必要な時には、了解を得て社内預金(金利2%)から借り入れるという。この社内預金の金額もバカにならない。もし会社に大きな不可抗力の痛手があってもつぶれない金額が貯まっている。
●この会社にとっては上記した三段階の成長のうち、第一と第二の段階は同じながら、第三段階は大きく異なる。
第三段階:社員が分離独立し、その社員がまた第一段階に戻れるように導く段階。
決して大企業になることが良いわけでも悪いわけでもない。社会にはあらゆる規模の企業が必要だ。大切なことは、あなたの生き方や経営の方針を慎重に、そして、あなたらしく決定することが肝要なのだ