『テルマエ・ロマエⅡ』で阿部寛は古代ローマ人の石像のような身体にするために身体を鍛えあげ、一作目より逞しい身体に仕上げたという。役者の役作りも大変である。
だが私が知るかぎり、もっとも役作りに情熱を注いでいる役者はロバートデニーロだろう。こちらのブログにその一端が紹介されている。
『タクシードライバー』(1976年)でデニーロは、2週間にわたって実際にタクシー運転手としてマンハッタン界隈を流した。体重も15キロ落としたという。
『ディア・ハンター』(1978年)では、物語の舞台となったピッツバーグで撮影前の数ヶ月を過ごす。さらに製鉄所で働く男を演じるために実際に働こうとしたが断られている。
『アンタッチャブル』(1987年)では、マフィアのボス、アル・カポネを演じるにあたり、額の生え際の毛をすべて毛抜きを使って抜いたらしい。
『ケープ・フィアー』(1991年)では凶悪犯を演じるために、5千ドルかけて歯を矯正。撮影後、今度は2万ドルをかけて元に戻した。
もっともすごいのが『レイジング・ブル』(1980年)での役作りだろう。
この作品でデニーロは実在のプロボクサー、ジェイク・ラモッタを演じた。チャンピオンの座を手にしたあと転落していくジェイクの半生を描いた作品である。映し出されるのは、引き締まったデ・ニーロと、その後、ブクブクに太ったデ・ニーロである。その体重差は20〜30キロにのぼる。
太っていた人が役作りのために痩せたという話はよく聞く。もともと普通の体型だったデニーロが体重を落とし、その後は役作りのために別人のように太ったという話はあまり聞いたことがない。
私たちが社員教育でスタッフに要求するいくつかの事柄もある種の役作りのためである。
これは「教育」というよりは当然の要求である。役者(社員)が監督(社長)から演技指導を受けているのが社員教育だととらえれば、もっと積極的にそれを行うべきだと分かる。また、演技指導を嫌がるような役者を使っていてはよい作品を作れるわけがないのである。