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電脳工房のコア作り その2

Rewrite:2014年3月26日(水)

「損得よりも善悪」を経営理念に、お客様のために最善をつくすことが電脳工房の特長だ。社長と専務が大手システム会社に在籍していた経験から、顔は広い。それをトコトン活用にして、人脈を武器にした営業を展開してきた。しかし、20年を経過し、今までと同じ経営スタイルではやがて破綻しかねない。人脈依存型の経営から、コア(中核)になる技術や製品をもった経営に転換していきたいのだ。

プロジェクトメンバーは、それぞれ課題を持ち帰ることにした。その課題とは、
「価格競争力」「利便性」「専門性」の3つについて、それぞれを高めるための方法論を紙に書き出すというものだ。メンバーのレポートは平岩次長のもとに集約されることになった。
二週間後、ふたたびメンバーが揃い、平岩次長からレポートが提出された。その表紙は次のように書かれていた。

電脳工房未来プロジェクト
1.「価格競争力を武器にするための選択肢」
2.「利便性を武器にするための選択肢」
3.「専門性を武器にするための選択肢」

まず、「価格競争力」のページを見ていくと次のような項目が並んでいる。

・中国などのアジア企業をアウトソーサーとして提携する
・開発の生産性を上げるために、業務を分業化し、開発期間を短縮
・基準単価70万円を引き下げるためには、社内の経費を徹底的に引き下げる。(特に、人件費と家賃)
・活用されていない資産を処分する。(保養所、ゴルフ会員権)
・・・etc

次に「利便性」のページを見ると次の項目が並んでいた。

主要顧客5社に対するアンケートによれば、お客が期待するサービスの上位3つは次のことであった。
・操作教育(今の操作教育は導入時のみで不親切)
・操作マニュアルの充実
・定期訪問
・なによりもバグがないことが最高の「利便性」
・サポート専用のフリーダイヤル
・サポート時間の延長と年中無休化
・オンラインヘルプ機能の充実
・・・etc

そして「専門性」のページでは次のようになっていた。

・開発環境をウインドウズ系もしくはリナックス系に絞る業界(顧客)を絞り、顧客の業務に精通する開発分野を絞る
・営業管理などに絞り、業務に精通する
・パッケージソフトを開発する。
・ITコーディネーターやシステムアナリストなどの有資格者を養成する。もしくは、採用する。
・スキルアップのための研修教育制度を充実させる。
・・・etc

おおむね選択肢は出そろったようだ。どれも大切なことばかりのようにみえるが、すべてを同時にやる訳にはいかない。

議論が紛糾したところで、若い社員が発言した。この発言が議論に方向性を与えることになる。

「専門性の追求をするためには、おのずと特定の業界か特定の業務か、特定の技術に絞らざるを得ません。何に絞るかはさておき、絞ったあとはトコトン顧客サービスを深める必要があります。つまり、うちの場合は【スペシャリティ】と【コンビニエンス】がセットなのではありませんか」

そこから生まれたキーワードが【高度な専門性に支えられた顧客サービス】だった。

株式会社電脳工房のコア作りは、このキーワードで決まった。あとはどの分野に専門性を求めるかだが、その結論は半年以内に社長を交えた場で決定されることになった。