Rewrite:2014年3月26日(水)
永遠不滅の顧客ニーズが3つある。それは、
1.ディスカウント(安価)
2.コンビニエンス(便利)
3.スペシャリティ(専門性)
である。企業としての中核的な魅力をどこにおくかは、この三つを基準において考えればよい。
ディスカウントとは、安売りとは違う。従来価格よりも圧倒的に安く売っても利益が出る経営の仕組みをディスカウントという。
コンビニエンスとは、お客側からみた利便性をトコトン追求したもの。
スペシャリティとは、他にない独自の製品やサービスをもつことや、品質の高さを売り物にすること。
この三つのなかで、どれか一つがあれば生き残ることが出来る。二つ以上あれば、成功できる。また、仮に一つしかなくても、それが突出していれば成功する可能性が高くなる。
コンピュータソフト開発の株式会社電脳工房(仮称)では、受注が不安定になりがちな下請け体質から脱皮したいと思っていた。メーカーに依存しない独立系開発会社をウリモノに、仕事の依頼があれば何でもこなしてきた。業界内ではある程度の知名度があったが、エンドユーザーからは、まったく無名の存在でもある。
そこで、社内に「未来プロジェクト」を結成。数名の幹部で、5年後の我社のあるべき姿を描き、より強い企業体質を築くためのシナリオを作ることにした。
メンバーは、「価格競争力」「利便性」「専門性」の3つについて、各自の現状認識を発表。ホワイトボードに記録を取っていった。
1.価格競争力・・・社内の見積もり基準となっている一人月70万円という数値は、同規模企業と比べても平均値であり、高くもなく安くもないという水準だった。実際、今の経営コストと受注の不安定さからみれば、60万円だと利益が出ない計算になった。
2.利便性・・・納品後一年間は無料サポート。二年目からは有償サポート契約を提案している。入ってくるサポート料金と発生するサポート経費を相殺すると、やや赤字だ。
3.専門性・・・開発する分野は多岐にわたる。企業の受発注を司る基幹系の業務から、社内メールシステムなどのグループウエア、eコマースの支援から、美容室のヘアスタイルデータベースまで文字どおり、何でもありだ。また、開発言語も多岐にわたり、ウインドウズパソコンからマック、UNIXなど、すべてのOSに対応してきている。しかし、ここだけはどこにも負けないという突出した魅力は一つもない。納品した製品にバグが発生することは頻繁にあるが、納期ぎりぎりまで開発に時間を取られるので、バグチェックできずに出荷するパターンが続いていた。
プロジェクトリーダーの平岩次長は、あらためて「これで良く20年間やってこれたなぁ」とつぶやいた。さあ、このプロジェクトはこの後、何に手をつけるのだろうか。