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御局様のいる会社

ある会社に招かれ、社長と役員の前で一時間ほどのミニセミナーを行った。テーマは「ビジョナリーを目指して」。社長が大の「ビジョナリーカンパニー」(ジム・コリンズ著)のファンで、私もメルマガでその本を絶賛していたので親しみを覚えたという。

与えられた時間のほとんどを社長と私との「ビジョナリーカンパニー」談義で終始してしまったわけだが、社長も他の役員 4名も非常に興味深そうに経営の奥深さを感じ取っていただいたと思う。

そこまでは大変和やかで気持ちの良い時間だったが、私が帰り支度を始めたあたりから雲行きがおかしくなってきた。

次回は幹部対象に同様の勉強会をやってほしいとおっしゃる。「結構ですよ、大いにやりましょう」と申し上げたところ、「できればその次にはうちの事務系スタッフにもやっていただきたい」という。

事務スタッフだろうが、新入社員だろうが、私が役に立つのであれば、どなたの前でもお話はするつもりだ。だが、一応理由を聞いておきたいと思い「事務スタッフのときにはどんなことを私に期待されているのですか?」

するととんでもない答えが返ってきた。

「当社の事務部門だけは伝統的に御局(おつぼね)さまのようなところがあってわずか 4人しかない総務経理部門なのですが、とにかく別世界なのです。営業や業務部門は連日遅くまで仕事をしているし、出張や研修受講は当たり前。ところが事務部門だけはいつの間にか治外法権みたく、定時が当たり前。4人中 3人が主婦を採用しているせいもあるのですが、定時を過ぎる会議や研修はほとんど拒否されます。新しい仕事をお願いしても露骨に嫌な顔をされるので、結局、総務部長がすべてをかぶって連日サービス残業をしている始末。「そんな彼女たちに意識づけを迫るような研修をお願いできればと思いまして・・・」と社長。

私はこみ上げる怒りで身体がワナワナしてきた。怒りの対象は事務スタッフでもなければ総務部長でもない。それを黙認している社長に対してである。しかも黙認するばかりか、その問題解決を外部講師の私のミニセミナーで計ろうという安易な魂胆に私は黙ってはおられなかった。

「社長、あなた何言ってるのですか?そんなことは自分で解決しなさい。しかも今すぐ事務部門に飛んでいっていったん仕事をやめさせ、話し合いの場を作り、協力体制を確認すべきじゃないですか。腫れ物にさわるような扱いを女性社員にしていて良いわけがないですよね、その様子を他の社員が見ていますよ。先ほどまでのビジョナリー談義は単なる読書談義だったのですか」

残念ですが、そういう魂胆の研修ならお断りしますと申し上げ、さきほどまでの友好的なムードとは裏腹の空気の中、会社を辞したのである。