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完全にうまくやる

人に誠意や情熱を知らせたいときには、笑顔と胸に手を当てるポーズが効果的のようだ。2020年の東京五輪招致成功の裏には、ニック・バーレー氏の存在が大きかったようである。

ニック・バーレー氏(Nick Varley)は、英国人。元ガーディアン紙の記者という経歴をもつイベント招致に強みをもつコンサルタント。2012 ロンドン、2016 リオデジャネイロに続いて 2020 東京も氏のコンサルティングで招致に成功した。「ハットトリック達成」と本人も胸を張る。

夏季五輪の招致以外では 7人制ラグビーの採用や、世界陸上 2017年ロンドン大会招致も氏の功績といわれ、今後はビッグイベントの招致には腕ききコンサルタントの招致が欠かせなくなるかもしれない。

東京招致団のプレゼンテーション原稿のかなりの部分をバーレー氏が書き、身振り手振りや表情についても念入りに指導したと言われている。

日本人は英語力、表現力に劣るので海外でのプレゼンテーションは下手だと言われてきた。私もそう思ってきた。ところが、今回の東京招致団のスピーチは全員に笑顔と自信と情熱があり、素晴らしかった。イスタンブールやマドリードも充分な熱意があったが、「外国語でのプレゼンが苦手」を自覚している日本団が練習量でライバルを圧倒し、完成度の違いを見せた格好だ。

近代オリンピック創立者・クーベルタン男爵以来 IOC の第一公用語となっているフランス語を多用したのも正解だった。特に、「震災支援のお礼」と称して現地入りされた高円宮妃久子殿下が前半部分をIOCの公用語であるフランス語で話されのは、多くの共感をよんだはずだ。滝川クリステル氏も流ちょうなフランス語と唯一登場させた日本語「お・も・て・な・し」で、言葉だけでなく、表情、ジェスチャー、声、すべてにおいて日本らしさを訴求した。

「一番のアドバイスは“笑顔”ですかね、プレゼンテーションでは安倍首相も笑顔でした。皆さんとても楽しんでいるように見えました」と、バーレー氏も高く評価した東京のプレゼン。

気になるコンサルティング料だが、ネットのうわさでは、1998年の長野冬季五輪を招致したとき、長野県はスイスのコンサルタント会社に約 4,500万円支払ったといわれている。あれから 15年経つので、少なくとも数千万、ひょっとしたら桁がひとつ変わっている可能性もある。東京五輪の場合、経済効果は 150兆円説もでているので、誘致成功のコンサルタントに 1億ぐらいは使っても惜しくない、という皮算用だろう。

「失敗と成功の違いは、物事をほとんどうまくやるか、完全にうまくやるかの差だ」 (米画家:エドワード・シモンズ)という言葉が
ある。今回は完全にうまくやった東京の招致団。この例を引き合いにして、仕事の準備の大切さ、プレゼンの大切さを社員にも訴えていこう。もちろん社長自身も目標やビジョンを発表するとき、笑顔、情熱を意識して社員に訴えていきたいものである。