今日は目標設定について書こうと思うが、目標といえばこんなエピソードを思い出す。
場所は記憶にないが、どこかの町に出かけたときだった。セミナーを終えてホワイトボードを消そうとしたら、「先生、ぼくがやります」と最前列にいた 40歳ぐらいの経営者らしき男性がかわってくれた。御礼をいうと、彼は名刺を渡しながら今日の感想を言った。「いやぁ、武沢先生、本当に良かったです。いままで自分で目標を作ったことがないので、今日の方法だったら自分一人でもやれそうです。ありがとうございました」
そのとき私は「それはよかったですね」と軽く受け流した。だが、後になって、”しまった”と後悔した。「今まで目標を作ったことがないとはどういうこと?」
彼は 40年間にわたって目標を誰かに与えられてきたのだろうか。ありえないことなので、きっと違う意味があるのだろう。
一般的には、目標を持つことの大切さは皆が知っている。また、目標の作り方が分からずに困っている、という人もほとんどいない。皆、やり方も知っているのだ。
自転車の乗り方が分からないという人はいないが、実際には乗れる人と乗れない人がいる。その差は知識ではなく技術だ。反復練習で体得するコツのようなものを体内にもっているか否かの違いだ。目標もそれと同じで、目標を持っている人と持っていない人の差は、知識ではない。会得したコツを身体にもっているか否かの差だ。
そのコツの一つが雑巾がけ。目標設定には雑巾がけが必要なのである。机や廊下を雑巾がけすると気持ちがよくなる。でも一日二日すると、ほこりや汚れがたまり、ゴミが落ちる。だからまた雑巾がけをする。仮に一ヶ月雑巾がけをしないとどうなるか。汚れの上に汚れが不着し、汚れが取りづらくなる。
目標設定した直後はピカピカの廊下のようなものでとても気持ちいい。でも一日二日するとほこりがたまるのでまた雑巾がけする。目標を思い起こすことや、昨日までの進み具合を確認し、必要があれば、行動を修正するか、計画を修正する。それが目標の雑巾がけだ。
雑巾がけをいつ、だれと、どんな方法でやるかを決めておこう。さもないと雑巾がけが億劫になる。すると、その人はもっと出来るはずなのに、必要最小限のことしかやらないズボラな人に成り下がる。それが続くと、ほんとうにそれ以上のことができなくなる。これが、やる気と才能のデフレスパイラルだ。
そうなる前に雑巾がけ。そうなってしまったら業者に頼んでワックスがけ。