まずは引用。
・・・その日、ホテルのボーイたちは見事な手際のよさで1,000台近い車を駐車させていた。身だしなみもこぎれいで、びっくりするほど丁重で、文字通り車の前後を走り回っていた。実に見事なショーだった。
そこで私はスピーチのなかでこの点に触れ、「マリオットに敬礼!」と言った。聴衆の間から盛大な拍手が起こったことからみて、ほかの人たちもあの素晴らしいショーを堪能していたようだった。
・・・
これは、米国コンサルタント、トム・ピーターズが書いた『経営破壊』
(TBSブリタニカ刊)の中に出てくる一節だ。
この駐車場誘導をしていたのは、「プロフェッショナル・パーキング・サービス社」のスタッフで、その創立者のパリスカもこの講演会に来ていたという。
この会社は、駐車場誘導を専業にするプロ人材を派遣しており、そのニッチな分野に生死をかけている。
ホテルのマネージャーであろうと、誰であろうと、ここのスタッフに勝る情熱で駐車誘導する人間は他にいない。
それはあたかもビル・ゲイツが次世代ソフトの開発に情熱を注ぐのと同じように、駐車こそが情熱を注ぐ対象なのだ。
そういえば、
先日、ある方に連れられて、地域で一番繁盛しているというラーメン屋に行った。かつおダシがよく効いて、醤油ラーメンのスープが絶品だという。
だが、その駐車場が大混雑。アルバイトらしき若者が駐車誘導してはいるものの、手際もわるく動作も鈍い。結局10分程度は待っただろうか、断念して他店へ行ってしまった。
駐車誘導はサービス業にとって第一印象ともなる大切な仕事のはずだ。特に混雑が予想されるような時には、誘導スタッフのキビキビとした“ショー”をお見せできるかどうかによって、混雑そのものを得点にかえることも出来れば、幻の醤油ラーメンのお店のように、失点にもなる。
かの「プロフェッショナル・パーキング・サービス社」のように、狭い分野ながらもそれに関しては絶対に負けない、と言う何かをもとう。
そうすれば、次のステージへ行ける。
プロフェッショナル・・社の長期戦略はしたたかなものがあるのだ。
その深慮遠謀は、凄みを感じる。
まず駐車誘導という狭く、分かりやすい分野で「マリオット」などの大手ホテルと契約し、信用を得る。そして、次のステップでは、ホテルのフロント業務全体を請け負う予定だというのだ。
なるほど、そうだったのか。
『分かりやすいところから入り、分かりにくい所で勝負する』という戦略であり、別名、『蛇がするする滑り込む作戦』と言ってもよい。
あなたの会社に置き換えると、どうなるだろう?