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日報で社員を鍛える

Rewrite:2014年3月26日(水)

「部下が日報を書かない」と憤慨している社長がおられる。あえて私は「日報はなぜ必要なのですか?」と聞いてみた。すると、「日報とは働いたことを証明をするものであり、従業員の義務でしょ。経営者は日報を見て、会社の流れを把握するもので、これがなければ誰が何をやっているか分からない。」という回答が返ってきた。

日報が、うまく機能していない会社では、日報の目的をはき違えているか、運用の仕方に問題を抱えている場合がある。まずもう一度、日報の目的を書き出してみよう。

日報とは、

1.上司に対して出来事や情報を報告・連絡・相談するためにある。
2.上司に対して実績数字や見通し数字を報告するためにある。
3.上司から本人に対してタイムリーな指導や教育が出来るための情報源である。
4.上司が部署や会社全体の方針を決めるための情報源である。
5.一日の仕事をふり返り、明日の成果と成長につなげる学習機会である。
6.一人の体験をグループで共有することにより、学習機会を飛躍的に高めるツールである。

おのずと日報の書式も大切な要素になる。縦軸に時間、横軸に訪問先しか記入できない日報では意味がない。また、日報は上司に提出したら手元になくなってしまうようでも困るのだ。上司のためだけに書くのでなく、自分のために書くものだから。

そして大切なことは上司からのフィードバックだ。フィードバックにも2通りの方法がある。一つめは直接フィードバックだ。文字通り、日報に対して、上司のコメントを付けて返す作業だ。
二つ目は、間接フィードバックだ。受け取った日報を元に上司が何らかのアクションを起こすことだ。それは、個別面談であったり、会議であったりケースバイケースだ。こうした2つのフィードバックとは、日報の目的「3」「4」を機能させることでもある。

ある会社でこんなことがあった。
「マネージャーの岩下さんは質問魔なんです。彼が同行してくれて営業に出向くと、恒例行事がある。お客さんとの商談終了後には必ず、ファミレスか喫茶店に入ります。そして、根ほり葉ほり質問攻めに会うんですよ。時にはお客さんと会っている時間より長くなることもあるのです。」

どんな質問をされるのか、と尋ねたら、

「今のお客さんのニーズは何か?」
「今の商談の中でお客さんが決算資料を見せてくれたけど、あれはどういう意味だと思うか?」
「最初の数分間、お客さんは不機嫌そうだった。そんな時、君一人だったらどんなことに注意するか?」
「お客さんは商談中に一度も時計を見なかったと思うが、君はなにか気づいたか?」
「この商談を成功に導く最大のポイントは何か?」
「この商談が失敗に終わるとしたら、それはどんな時か?」

などの質問が続くそうだ。

恐るべし、岩下。これぞまさしく「追体験」なのである。わずかな商談時間の中にも無数の学習ヒントがある。それは商談直後の生々しさがあるうちに反すうされるべきだ。商談の成功失敗に一喜一憂するばかりでなく、部下の経験を確実な学習機会にしていこうとしている岩下マネージャーの姿勢に学ぶことは多い。

毎日の業務経験によって確実にステップアップしていく社員の集団を作ろう。そうした経験主義、現場主義が底流にあってこそ、集合研修や自己啓発が的を得たものになり、相乗効果が高まるのである。1年の経験を3回くり返したに過ぎない3年生社員よりも、毎日着実な歩みをしてきた3年生社員をもっている会社が勝つのは、自明の理と言ってよい。