先週末、電通の株式上場があった。公募価格と同額の初値42万円が付いたが、上場時の時価総額は日本マクドナルドを下回る結果になった。関係者の期待を裏切るスタートとなったようだが、これには、UBSウォーバーグ証券の入力ミス事件が影響しているという。
同証券のオペレーターが61万円で16株の売り注文をだすつもりが、16円で61万株もの売り注文を出してしまい、株価形成にマイナスの影響を与えてしまったもの。
実際に16円で売買が成立したわけではないが、相場を下げる要因になった。
このミスによって同証券では、この日の終値47万円で計算すると20数億円の損失を抱えることになる。
また、未確認情報ながら、この事件によって同証券では、全世界数万人の社員の昇給を凍結したとの話も耳にした。
入力端末には警告機能があるが、それを見落とした人的ミスだという。
(詳細は、日本経済新聞 12/3、12/4号)
UBSウォーバーグ証券のプレスリリース
http://www.ubswarburg.co.jp/flash/japanese/press/release/pj20011202.html
こうした人的ミスは、どの企業でも起こりえる。人間はミスをすることを前提にしてシステムが作られているはずなのだが、それでも新手のミスが出る。
今回の事件は、警告機能を見落した、とあるが、警告機能を解除することも現場では可能だ。また、警告メッセージが本当に警告の機能を果たしていないこともあり得る。
そして、一人の社員によるミスは、その社員ひとりのものだという保証はない。別の社員がやっても同じミスをする可能性がある。
何がいけないのか、何を改善すべきか。それは決して人ではない。システムなのだ。
処罰の対象として当事者を罰することは当然だが、再発防止を考えるときには人頼みで終わってはならない。
小売店のA社とB社があった。ともにチェーン店で、店長が開店から閉店まで店のすべてを任されている。
ある年、この2社が同じようなミスをした。
店長も副店長も寝坊して開店時間にシャッターが下りたまま店が開かない、という事件だ。
(私も小売店店長時代に同じミスをしているが、それは余談)
その対応に企業力の差が出た。
A社・B社ともに、店長と副店長を始末書処分にしたことは同じだが、再発防止システムまで踏み込んで考えたのはA社だけだ。
まずB社は何をやったか。
次に同じミスをしたら、減給または賞与カットをすることを予告し、それを受け入れるということを始末書に書かせたのだ。
つまりこのミスはあなただけのものであり、同じミスをくり返すと厳罰に処しますよ、という意思表示である。
ペナルティを強化することで自覚をうながそうとするのがこの企業の再発防止策だ。
一方A社は、全店長に通知を出し、予防策の知恵をメールで集めた。
その結果、A社では店長と副店長だけでなく、正社員全員とパートアルバイトの一部にまで店の鍵を持たせることを新たなルールにした。
ミスはミスとしてペナルティを課すが、システムを強化することで再発を防ごうとしたのがA社だ。
こうしたアプローチが本来の再発防止策だ。
企業は人的ミスを根絶させることはできない。
しかし、企業の存亡に関わるような重大なミスや、著しく信用を低下させるようなことは、システムによってそれを回避しなければならない。
報告・連絡・相談によって顧客からのクレームや現場でのミスがトップに届くようなシステムが常日頃から存在することも大切なことだ。