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英雄とは、自分のできることをした人

●巨匠リドリー・スコット監督の映画『ナポレオン』が12月に公開される。上映時間は2時間38分の予定だが、スコット監督はもっと長い4時間半版の公開も希望しているそうだ。
果たしてどうなるのだろう

●日本でもアメリカでも英雄視されるナポレオン。だがフランス国内では評価が真っ二つに分かれるそうだ。そんなナポレオンがスコット監督の手腕によってどのように描かれているのか興味深い。予告編をみるかぎり、200年前の戦争シーンもリアルに再現されていて見どころは多そうだ。

●フランスの作家ロマン・ロランは「英雄とは、自分のできることをした人だ。
凡人は、自分のできることをせず、できもしないことをしようとする人だ」と言っている。

●そういう意味では、「英雄」ナポレオンは自分ができることをした人といえる。
彼が何をしたのかを知るための投資が12月の映画代金と2時間38分という時間である。

●「凡人はできもしないことをしようとする人」という点にも賛同できる。
何かがうまくいきだすと調子にのって手を広げすぎ、足元をすくわれる経営者が少なくない。

●某日お目にかかった飲食ベンチャーの社長もそんなひとりだ。
資本金2千万円(株主4名)で会社を立ち上げ、「実験店」として一号店のバーガーショップをオープン。肉を使わないヘルシーバーガー店として話題になり、4ヶ月目には黒字化した。

●連日行列ができるバーガー店としてマスコミの取材も増えた。テレビの影響が一番大きく、それをみて複数の不動産会社が訪ねてきた
「こんな有利な条件の物件がある」という。どれも目移りしそうな話ばかりだ。社長の夢は一気に広がり、「できもしないこと」を「できる」と錯覚した。

●「実験店」が好調だったので店を作れば作るほど利益が増え、資金も増えると錯覚したのも痛かった。なんと2号店と3号店を同日オープンする決断をしたのだ。数字が苦手な社長とはいえ、周囲にいさめてくれる人がいなかったのが不思議だ。

●数ヶ月後、新店工事中に資金ショートを起こした。あわてて金策に走り回ったが後手を踏んだ資金調達はうまくいかない。結局、最終的には一号店をも手放すことになり、デリバリー事業で企業再生に取り組むことになった。

●ベンチャー企業が開業一年を待たずに企業再生に取り組まねばならない。本業の失敗ならあきらめもつくが、本業が好調なのに経営の誤りで店を畳む。
本来はすべてうまくやれることも、「あれもこれも同時にできる」、「スピードを求めすぎる」となると、とたんにできなくなる。

起業家や経営者には自信家が多いが、あれもこれも同時にできるとは決して考えてはならない。