その他

人に優しくない会社の末路

人に優しくない会社の末路

●東京商工リサーチによれば、2023年1~2月において人手不足が原因で倒産した企業は21件で、前年比2.6倍と急増した。
いろんな事情があったのだろうが、結果的にみれば「人に優しくなかった」可能性がある。典型的な労務倒産だが、今後は不況型倒産よりもこちらが増えていく可能性がある。

●そういう点で俄然注目を浴びているのが「人的資本」の開示だ。
2023年3月期決算から、上場企業などを対象に人的資本の情報開示が義務化された。
「有価証券報告書」を発行する約4,000社が対象となる。

●人的資本の情報開示とは、従業員の知識や技能を企業の資本とみなそうとする考え方だ。
まず前提となる従業員の定着率が悪かったり、中途入社の社員の管理職登用率が低い、女性管理職の比率が低いなどの場合、「人に優しくない会社」と見なされる。当然、投資家はそうした企業への投資を避けることになる。

●上場企業の中にも「人に優しくない会社」が存在する。
「会社四季報」をみれば、企業の従業員数と平均年齢、平均給与が載っている。それをチェックすれば、「あれ、リストラしてるわけでもないのに社員が1割も減っている」といった会社を見つけることができるのだ。
だが、そこまでマメにチェックする投資家は少なく、人的資本はブラックボックスに近い。それが今後は劇的に変わりそうなのだ。

●人的資本を充実させない限り、企業の持続的成長は叶わない。
そういう意味においては、人的資本の充実=サステナビリティ経営の推進ともいえるわけで、そうしたことに関する企業の姿勢が問われている。

●上場企業も今、手探りでそれらの開示方法を研究しており、今後各社の取り組みが明らかになってくるだろう。
私はいま、会社四季報最新号の4K企業レポートを執筆している真っ最中だが、人的資本開示の取り組み事例をいくつか発見することができた。

●今日はその中の一社、「株式会社東名」の事例をご紹介しよう。
三重県四日市に本社がある「東名」は光回線サービスや電力小売りなどの事業を営む東証プライム企業だ。1997年設立、2019年に上場した。
この会社の決算説明資料がこちらにアップされているので、ダウンロードしていただきたい。

→ https://ssl4.eir-parts.net/doc/4439/ir_material_for_fiscal_ym/133692/00.pdf

●資料の32ページ、34、35、36ページに人的資本ならびにサステナビリティ経営の推進に関する同社の目標と計画がある。
優れた手本であるとまでは言わないが、工夫のあとがうかがえる好例だと思う。

●今後、人的資本やサステナビリティに関する方針が中小企業にも求められるようになるだろう。
当然ながら経営計画にもそれらを盛り込む必要があるわけで、上記の事例などは大いに参考にしていただきたい。