Rewrite:2014年3月26日(水)
企業経営の基盤を確固たるものにするには、優秀な人材の獲得とその定着・育成を欠かすことができない。つまり、求人活動から始まって、採用・定着・育成にいたる一貫したインフラ(基盤)を整備していくことが求められる。
そうした「人」にまつわる一連のインフラを、次の6つのグループに分類した。この6つの合計値の高さが企業力を左右すると言っても良い。
1.採用インフラ・・・求人採用に関する基盤
2.組織インフラ・・・組織を運営するための規則・規定などの基盤
3.環境インフラ・・・仕事をしやすい職場環境基盤
4.人間インフラ・・・目標とすべき先輩・上司の存在という基盤
5.育成インフラ・・・人を育てるための基盤
6.ビジョンインフラ・・・人の情熱や意欲をかりたてるための基盤
ひとつずつ検証してみよう。
●「採用インフラ」・・・人材獲得合戦からバトルが始まっている
プロ野球では、シーズンオフになると同時にFAやドラフト・トレードといった「人」の移動が活発になる。この期間中に効果的な補強が出来たところが次のシーズンを有利に戦える。登録できる人数枠が決まっているなかで最高の布陣を敷くために、フロントやスカウトが一年以上前から学生や社会人と接触して人材獲得競争を行うのだ。企業では、登録選手枠がない。予算があれば何人獲得しても構わない。また、予算がなければ補強しなくても構わない。それにシーズンオフというものがなく、通年で補強できるのも特徴だ。
●「組織インフラ」・・・組織を運営するための規則・規定
他人従業員を雇用し、組織を維持管理していくためにはどのような諸規定が必要になるのだろうか。まずは就業規則は法に則っていながらも同時に、社長の意思が充分反映されたものにしよう。ひとつのサンプルがこちらにある。
東京はたらくネット 就業規則作成の手引き
●「環境インフラ」・・・仕事しやすい職場環境の整備
机や椅子、休憩場所や時間、ファイルキャビネット、パソコン、スマホやタブレット、車両や駐車スペースなど働く環境への配慮が勤労意欲や生産性に直結している。製造業では「労働装備率」といって社員一人あたりの固定資産額を計算している。そして労働装備率の向上は、生産性の向上に直結することが分かっている。非製造業にあっても基本は同じはずだ。
●「人間インフラ」・・・目標人物やライバルが社内にいること
目標となりうる上司・先輩がいることや、同期の仲間やライバルがいることなどが、力を与えてくれる。定期的な社員アンケートなどで、「尊敬している社員は誰ですか」という項目を設けて調査している会社もある。また、周囲にマイナスの影響を与えるような人がいたら放置せず矯正せねばならない。
●「育成インフラ」・・・人を育てるシステムがあるか
新入社員を採用したら、労働生産性が極端に悪化する会社がある。つまり、新人が戦力になるのに時間がかかり、最初のうちはタダメシを食べているというわけだ。新人が戦力になるのに何ヶ月かかるかという問題は、業種によって異なる。また、同じ業種でも企業によって歴然とした差があるのも事実だ。その反対に入社一二年生が会社を引っぱっているような会社もある。
マニュアルの充実、先輩によるOJT、権限の委譲がどの程度なされているか、研修教育制度がどの程度整っているか、といった人育てに関するインフラが人の能力発揮や定着問題をも左右している。
●「ビジョンインフラ」・・・社員は会社に夢を感じているか
会社として夢があること、先輩上司が夢のある仕事ぶりをしている事などだ。
先日、遠方にある会社を訪問したときの出来事。途中で道に迷い、近くを歩いているビジネスマンに道を尋ねた。偶然その人は、これから訪問する会社の社員だった。ともに歩きながら、「どんな会社ですか」と尋ねると、「夢のある会社です」という答えが返ってきた。会社に夢があり、それが社員と共有できている証拠だ。
● 「採用」についてはもう少し詳しくみてみよう。
人事部がない会社や、あってもその規模が1~2名の会社では、社長自ら採用活動のリーダーシップをとるべきである。中小企業にとっては、一人の人材に対する依存度がきわめて高い。従って、優秀な人材を獲得できるかどうかが、その後の栄枯盛衰を決めると言っても言い過ぎではないのだ。採用活動を進める上で大切なことは、次に列挙した。これらは、人事部の担当者に任せておくことではない。
1.獲得したい人材像を具体的にイメージする
2.求人予算の決定
3.採用媒体の決定と、我社の魅力を存分に表現した誌面づくり
4.インパクトの高い会社説明会の企画・運営
5.人材を見抜く機会は面接の場面だけでなく、企業訪問や手紙のやりとりなどからも行われる。そうした接触機会も有力な選考場面だ。
まず真っ先に決めるべきことは、欲しい人材のイメージや人数を決めることである。
例えば中途採用の場合、「30~40歳の営業管理者。建設業界での営業経験者で、設計図面が読めることとモバイルが活用できる人材。健康で情熱的なプラス発想のひと。年収は500~600万程度」と決めておく。
理想通りの人に出会えるとは限らないが、採用活動のスタートは目標設定から始まる。新卒採用や中途採用にかける費用には、適正基準というものがない。一人当たり10万円以下で成果を出している会社もあれば100万円を越えているケースもある。雇用情勢によって必要金額も変化するが、現在では次のような目安ではないだろうか。
新卒採用・・・30万円/一人
中途採用(一般職)・・・30万円/一人
中途採用(コア人材)・・・100万円/一人
人材斡旋会社の成功報酬は、獲得人材の年収の3割というところが多いので、コア人材の採用ではその金額がおおむね上限予算となる。仮に年収500万円の人材をとるのであれば、その3割(150万円)が上限となる。これは、会社案内などの制作物を除いた金額である。
採用というと無条件に大手媒体誌しか考えない会社も多いが、それでは工夫が足りない。
ある総菜店では、大手媒体誌の求人で4名の反応があった。だが、いずれも満足できる出会いではなかったので、喫茶調理に関する専門学校に求人案内を掲載したら、半額の経費で2倍の応募があった。欲しい人材のイメージを明確にすれば、求人方法や予算も変わってくるものだ。
「採用インフラ」を強化するとは、優秀な人材を獲得できる確率を高めることである。その成否をにぎるのは、社長みずからが採用活動に参画することなのである。