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17年前、西安で考えたこと

17年前、西安で考えたこと

●値段と売れ行きに関する組合せをざっくり四つに大別すると次のようになる。

Best・・・高いものがたくさん売れる状態
Good・・・高いものが少量しか売れない状態
Bad・・・安いものがたくさん売れる状態
Worst・・・安いものが少量しか売れない状態

いま、あなたの会社はどれにあたるだろうか。

●それに関するエピソードを思い出した

古い話で恐縮だが2006年の今日(5月9日)、私は中国の西安にいた。
シルクロードの東の起点で、昔は「長安」といって周、秦、漢、唐の首都であった古都市「西安」。いかにもシルクロードらしく、イスラム料理店が建ち並ぶ「回民街」(イスラム人街)には連日多くの旅行者や地元民が訪れる。

●近郊に始皇帝の「兵馬俑」や唐の玄宗皇帝が楊貴妃のためにつくった離宮の遺跡もある。さらには足を伸ばせば三國志の時代の古戦場、「五丈原」もある。
蜀(しょく)の諸葛孔明と魏(ぎ)の司馬懿(仲達)が百日におよぶ対峙をし、孔明はこの地で陣没した。三國志ファンなら涙ものの聖地といえる。

●また西安の街中には有名な「三蔵法師」が天竺(てんじく インド)から
もちかえった膨大な仏典がおさめられた大雁塔(だいがんとう)がある。
孫悟空のエピソードは世界的に有名で、悟空ファン、仏教ファン、仏教関係者の聖地としても知られた西安。

●さらにいえば、遣唐使のつかいで空海が西安を訪れている。
市内の青龍寺で恵果法師と運命的出会いをはたし、密教の奥義を伝えられた空海。いまも清龍寺敷地内には空海記念堂と空海記念塔が立っていて往事をしのぶことができる。

●こうしてみていくと、西安はすごい場所なのだ。
だが歴史と仏教に興味がない人からみれば、日本から4~5時間かけてまで行く魅力がないのだそうだ。「そうだ!西安いこう」とはなかなかならないようだ。

●私にとっても西安は縁遠い場所だった。しかしある日、偶然チャンスが訪れた。
上海で仕事を終え、知人とその奥さんと三人で惜別の食事会をしていた。すると奥さん(中国人)は西安の生まれで、今も妹家族が暮らしているという話をした。

●私が西安に関心をしめすと、「妹にボランティアでエスコートさせましょうか」と申し出てくださった。
上海からなら2時間半のフライトだ。その場でチケットとホテルを取っていただき翌朝西安に飛んだ。こうした偶然のような縁がなければ一生おもむくことはなかった都市かもしれない。

●話はかなり脱線した。

冒頭にお話しした、価格と売れ行きに関する考察はここ西安での買物がきっかけになっている。

西安初日、山水画か書の掛け軸をみたいという私のリクエストで妹さんが美術館のようなところに案内してくれた。ため息がでるような名品をみたあと売店にたちよった。いずれも物欲が刺激される品々で、店内もかなり混雑している。高級品が多く、安くても5万円の値が付いているがレジには順番待ちができていた。

●すでに散財していた私にとって5万円はちょっと痛い。妹さんにお願いしてもっと安いお店に連れて行ってもらった。
そこもさきほどの売店によく似た売場だったが、あきらかに値が安い。
高いもので数千円、やすいものだと数百円で売られている。
妹さんの話では、商品の大半は西安市内の同じメーカーのものなのでこちらの方がお得なのだそうだ。

●ただ不思議なことにこの店に買い物客はほとんどいない。博物館に併設されたさきほどの店はあれほど混み合っていたのに、こちらは私以外に1~2組の客しかいない。

●その日の夜、私はホテルの自室で買ったばかりの掛け軸を広げながら二つの売店の違いを考えていた。
なぜならその後、最初の店にもどって10万円の掛け軸を買った自分がいたからだ。

Best・・・高いものがたくさん売れる状態
Good・・・高いものが少量しか売れない状態
Bad・・・安いものがたくさん売れる状態
Worst・・・安いものが少量しか売れない状態

●最初に訪れた店は「Best」のグループといえる。次に訪れた格安店は「Worst」だ。どうして高いものが売れて、安いものが売れないのかを考えていた。

●美術品を買って旅の良い思い出を残したい。
土産の品をみるたびに格安店で買ったことも一緒に思い出すようなことはしたくない。商品をみるたびに最善の買い物をした自分をほめてやりたい。そうなると「高くても売れる」のではなく「高い方が売れる」のだ。高くなければならない。

●まるでいま、高級ブランドの高額バッグが世界中で売れまくっているように。商品自体がもつ実態価値とは別の付加価値に気づくことで値付けがかわってくる。
安くすれば売れるというのは一部の必需品に限られている。いかにゼロをひとつふたつ多い値付けができるか、それを企業は真剣に考えるべきだ。

西安の夜の考察を久しぶりにまた、思い出している。

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