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平家にあらずんば・・・

平家にあらずんば・・・

●「諸行無常」、「おごれる者は久しからず」という。
不老長寿の薬を求めて中国全土を旅した秦の始皇帝も49歳であえなく旅先で病死した。
無限の富を注いで秘薬を手に入れ、試しつづけたわけだが、結局は平均寿命で亡くなった
わけだ。中国統一の偉業からわずか1年後のことだった。

●「平家にあらずんば人にあらず」といわれたのが1175年ころ
6年後の1181年に平清盛が亡くなり、その4年後の1185年、壇ノ浦の戦いに敗れた
平家は滅亡した。絶頂から滅亡まで10年。

●1980年代初頭に私はアメリカ小売業視察ツアーに何度か参加した。
流通革命が進行中のアメリカ小売業から学ぶことが日本の流通業近代化に欠かせないという思いで、3ヶ月分の給料を支払ってツアーに参加した。

●アメリカで過ごす10日間は好奇心と睡魔のせめぎ合いだった。
連日、びっちり詰め込んだ日程でハイウエイを飛ばしてバス移動する。
漫然とモールやお店で買物するのは楽しいが、視察の目的やテーマを決めて、ノウハウを学ぶ視察は楽しくなんかない。ノート片手にお目当ての売場に向かい、店員さんに嫌がられないように視察ノートをとりまくる。

●バス内では休むことなくセミナーがつづく。夕方ホテルにもどるとまた2時間ほど
レクチャーがあり、19時解散。その後、課題レポートを整理し事務局に提出する。

●21時近くになってようやく自由行動。仲間をさそいあってレストランに向かう。こちらの方はすこぶる楽しく刺激的だ。はめをはずしてホテルにもどるのが24時を回るのはざらだ。それでも翌日は朝8時に集合して目的のショッピングモールに向けてバスに乗る。

●「もっと見たい」「たくさん見たい」という旺盛な好奇心とは裏腹に強烈な睡魔が
おそう。睡魔に勝る誘惑はないのではなかろうか。
そんなときは覚悟をきめて5分だけ眠る。となりの仲間に5分経ったら起こしてと頼み、
眠りに落ちる。セミナー講師に見つかると名指しで注意されるから隠れて眠る。

●当時、世界一の小売業で世界最強組織ともいわれていたのが「シアーズ・ローバック」
だった。今の日本のイオンのような存在で、全米のショッピングセンターのキーテナントだった。シアーズは食品部門をもたなかったが、冷蔵庫も洗濯機もベッドもテレビもシアーズブランドの製品を売っていた。
全米でも最高の会社だったから、優秀な学生がシアーズに押し寄せ、前途も洋々の会社だった。

●だがそのシアーズも平家のように滅亡した。私が視察してから20年後のことだった。
当時のライバルだったJCペニーもKマートも破綻した。
「ベッド&バスビヨンド」という天井まで家具が積まれた店を見て驚いたが、
この会社も先日倒産した。

●当時の小売業が全滅したかというとそうでもない。
ごく一部の会社は今も生き残り、善戦している。
「ウォルマート」と「ターゲット」などだ。この二社はアマゾンの成長を手本にデジタル化に着手し成功した。もしデジタル化に遅れをとっていたら、
「シアーズ」や「ベッド&バスビヨンド」のようになっていただろう。

●個人商店をのぞけば、今元気な小売業でデジタル対応していない会社は一社も存在しない。そんな元気な会社でも10年後は約束されているわけではない。中国の「アリババ」がいままさに大企業病におかされ、もがき苦しんでいる。
つまり敵は社外のライバル企業だけでなく組織構造がもたらす内側の病もある。
まさしく企業は内憂外患なのだ。

<次の記事につづく>

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