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カレーパンとハチミツ、デパ地下の教訓

カレーパンとハチミツ、デパ地下の教訓

●デパ地下は食の宝庫で見ているだけでも楽しい。
この週末、食品フロアを歩いているとカレーパン専門店を見つけた
見たことがないカレーパンが並んでいるので思わず足を止めてショーケースをのぞきこんだ。

・エビフライカレーパン
・あんこカレーパン
・だし巻き玉子カレーパン
・ポテサラカレーパン
・チーズコロッケカレーパン
・・・etc.

いずれも1個350円から400円程度。普通のカレーパンの2倍くらいの値段だが、
付加価値が高いのでかなり売れているようだ。
普段なら迷わず「あんこカレーパン」を買うところだが、ダイエット中なので自制し、
ポテサラカレーパンとだし巻き玉子カレーパンを買って家で食べてみた。

●普通にうまい。カレーパン自体のクォリティが高い上にだし巻き玉子もポテサラも
カレーに負けないしっかりとした主張をしてくれる
従って、美味いカレーパンと美味い具材をそれぞれ口に入れた感じの美味さがした。

●ただ惜しむらくは感動がない。マリアージュがないのだ。1足す1が3や4になるような
融合がない。したがって話のタネとして手土産に喜ばれそうだが、個人的にリピートしたいとは思わなかった。

ここに企業努力のポイントがある。売る側の腕の見せ所があるはずだ。

●たとえば、マリアージュがうまれるカレーパンメニューは何なのかをトコトン追究する。
その結果、一個500円の大間のまぐろ中トロカレーパンが生まれたり、バフンウニカレー
パンが出来てもよい。

「こちらのメルローワインと組み合わせた、南仏風カレーパンディナーを
お楽しみください」
とワインとセットでカレーパン3個を3000円で売る手もある。
美味しくてこだわりのカレーパン屋に期待したいのはそういうことである。

●カレーパン屋のとなりでは小さなブースにハチミツ専門店が出店していた。
年配の女性ひとりが切り盛りしている。

「どうぞ見てってください。会津から来ました。明後日までのイベント販売です」という。そこに並んでいたハチミツの瓶をみて驚いたのは圧倒的な種類の多さである。

・マロン(クリの花)
・はりえんじゅ(アカシア)
・栃の花(トチノキ)
・そばの花(ソバノハナ)
・きはだの蜜(キハダ)
・ぼだいじゅ(シナノキ)
・上溝桜(ウワミズザクラ)
・山桜(ヤマザクラ)
・・・etc.

蜜を採取する植物によってハチミツの色も香りも味もすべて異なるのだそうだ。
「味の違いを試食していかれませんか?」というのでお願いした。

●「はりえんじゅ」の繊細で上品な甘さはハチミツってこれだよねと思わせる定番の味。「上溝桜」はほのかに桜の香りがする。いや、サクランボの香りというべきか。「きはだの蜜」はさっぱりした爽やかな甘さが特徴だ。このように10種類ほど味見するうちに何が何だか分からなくなってしまった。

●結局、三種類のハチミツを購入したわけだが、ここでもカレーパン屋と同じ感想をもった。ハチミツの瓶を売ることしか考えていないのがもったいなかったのだ。

●せっかくハチミツの奥深さをしった私に対して用途提案、マリアージュ提案をしてほしかった。さらにはハチミツに関する歴史エピソードなども語ってくれたりしたら私はハチミツファンになっていた可能性がある。ハチミツのヘビーユーザー(つまりこのお店のリピーター)になっていたかもしれない。なのに私は3本だけ買って名前も告げず帰ってきてしまった。

●私ならまず個人名を聞いたうえでこうプレゼンする。

「武沢さん、この『ぼだいじゅ』はね、シナノキ特有の華やかなハーブテイストが特徴なので、ニオイの強いものとの相性が抜群なのですよ。ヨーロッパ系のチーズ、たとえばゴルゴンゾーラやウォッシュタイプのチーズには実によくあいます。無糖ヨーグルトにかけていただくとヨーグルト本来の濃厚さが際立ち、『ぼだいじゅ』の甘みとが互いに引き立て合ってやみつきになりますよ」

●そんな話を聞かされたら、私は同じフロアで売っているチーズやヨーグルトと一緒に
『ぼだいじゅ』を買っていただろう。
こんなプレゼンはどうだろう。

「武沢さん、ノドが調子悪くなったり咳き込んだりすることはありませんか。この『ヤマザクラ』は昔から咳止めとして利用されてきた桜系のハチミツで、ノドの調子が悪いときはそのままスプーンでお舐めください。不思議と症状がやわらぎます。また、桜系特有のほのかなハーブテイストはバタートーストとの相性もよく朝食のおともに最高ですよ」

●ほかにも調べてみたら「肉料理にあうハチミツ」「オリーブオイルと一緒にトマトにかけると最高の料理に仕上がるハチミツ」、「野菜サラダに少量かけると食がすすむハチミツ」、「アーモンドなどのナッツ類とあわせるとマリアージュするハチミツ」、「クレオパトラもこよなく愛したアフタヌーンティーに溶かすと最高に美味しいハチミツ」などなど種類ごとに活躍の仕方が異なることがわかった。

●こういう情報こそハチミツ専門店の価値なのに・・・。
ハチミツ屋の隣は寿司屋だった。ひょっとしたら寿司屋で売っているマグロの赤身に少量垂らすと味が引き立つハチミツというのがあるかもしれない。
あるいは、反対側の隣で売っているカレーパンとハチミツ入りアフタヌーンティーが最高の組合せになるかもしれない。

食材を売るのではなく、食べ方を売れば自然に食材も売れる。

デパ地下の教訓をあなたに当てはめるとどうなるだろうか。

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