世界経済

“予断を許さない” 状況

コロナワクチンの開発に成功した2020年の後半、メディア各社はこう報じていた。
「来年(2021年)はワクチンの効果で先進国を中心にコロナ禍が収束に向かい、経済活動は再開されるだろう」
だが経済が再開されては再度規制され、規制されては再開されるのくり返しで3年目の今も混乱は収まっていない。

久しぶりにお天気に恵まれたこの週末。
梅雨明けにビアガーデンで生ビールとジンギスカン料理を楽しむのを恒例行事としているY氏がいつもなら画像をFacebookにあげる頃合いだ。
昨年も一昨年もコロナ禍どこ吹く風で、夏の吉例行事を守っていたY氏。
ところが今年はまだのようだ。
気になったので連絡してみたら「BA.5のため自粛します」と返信があった。

過去二年は豪快に飲んでいたY氏が今さら自粛?
理由を聞くと、奥さんが原因だという。
今年春に奥さんがコロナ感染した。
病院では「軽症扱い」で自宅療養を指示された。
実際は軽症なんかじゃなく、奥さんは経験したことのない身体の辛さを訴えていた。
ベッドが足りなかったのだろう。
自宅で激しく咳き込み、辛そうにのたうち回る奥さんをみてコロナに恐怖感をもったY氏。
幸い奥さんは一週間で元気になったが、「あんなのインフルエンザの親戚だよ」という持論は撤回した。

Y氏は食品製造業の経営者であり、多くの人に外食してもらいたいという思いがある。
外食を煽るようなFacebook画像が多いのもうなずける。
Facebook画像も「コロナなんか大したことない」という無意識のうちのポジショントークだったのかもしれない。

先日、旅行大手のHISが、ハウステンボス(長崎県佐世保市)を売却すると報じられた。売却額は数百億円に上るようで、コロナ禍で業績が悪化しており、資金確保が狙いだといわれている。

しかし私はもう一段深読みをした。
HISの澤田会長がこれからもコロナ禍が続くと判断したのではないか。
政府が国民の行動規制を緩めている今が高く売れるラストチャンスと踏んだのではないかと思うのだ。

コロナに関しては情報が多すぎて混乱している。
「感染者の大半が軽症か無症状らしいよ」とか「コロナの重症患者って全国でも200人そこそこしかいないんですよ」などといった話だけを聞けば、じゃあビアガーデン行こう、プール行こうとなる。
だが、Y氏のように、家族が軽症扱いされていながらすごく苦しんでいるのをみると、「軽症」の概念が変わるかもしれない。

私もオンラインイベントのパートナーの一人が先週末コロナ感染し、イベントを急きょ延期した。
氏の場合は40度超えの熱が二日続いた後、三日目に37度5分に落ちついた。
しかし咳こみがひどく、夜もまったく眠れない状態。
仕事の予定は一週間分すべてキャンセルする羽目になった。
これも「軽症」であり「重症」にはカウントされない。

軽症の中にも本当に軽くてインフルより楽だったという人もいる
それは個体差の問題だし、ワクチンを接種していたかいなかったか、あるいは持病をもっているか否かにもよる。

「予断を許さない状況」というときの「予断」とは、よく調べていない段階で何らかの判断を下すことをいう。
要するにポジショントークだ。
先にポジションを決めてしまうとそのポジションに都合が良いニュースが集まる。
コロナに予断は禁物だ

メディアの多くは「深刻だ」というポジションに傾きすぎているように思うが反対よりはマシだろう。
メディアに接する私たちはそうしたメディアのポジションを理解したうえで報道に接する必要がある
昨年までのY氏のように反対側のポジショントークもあるわけで、絶えずニュートラルでありたいと私はおもっている。