実話ベース物語

顧問税理士の逆襲

時々、びっくりするような出来事に遭遇したり、信じがたい内容の相談を受けることがある。
これは30年前に体験したことだが産業スパイは中小企業にもいるという話。

ライバル会社で人事課長をしていた幹部が私がいた会社に転職してきた。
これでライバル企業の内部情報が引き出せるし即戦力になってくれると期待され厚遇された。
私も彼と同じ人事部としてつきっきりでサポートした。
ところが2年後、その社員が突然辞めた。
あとからわかったことだが、元の会社に戻っていた。
人事制度はもちろん、立場上知り得た出店計画や財務データなどもすべてライバルに漏れていたと思われる。

最初からスパイ目的の入社だったと上層部は結論づけた。
ライバル会社はそんな露骨な手をつかうのかと苦々しい気分だった
それ以上に私がショックだったことは、その社員と個人的に親しくなり彼の自宅に招かれて奥様の手料理まで相伴にあずかる関係だったこと。
おとなしく真面目な社員にそんなことをさせるライバル会社は絶対許さないと心に誓ったが、その会社はその後上場し、今も東証プライムにいる。

最近、耳を疑った珍事はこれ。

A社長
A社長
「武沢さん、担当税理士が決算書を作ってくれません。どうしたらよいですか」

そんなびっくりするような相談があった。
顧問料をもらっていながら仕事をしない税理士さんなんているのか
半信半疑だったが、確認したところ本当だった。
期限から半年以上経っているのにまだ申告していなかった。

A社長
A社長
「武沢さん、このまま時間が経つとどうなります?」

武沢
武沢
「このままだと無申告加算税に延滞税がかかってくる。場合によっては大きなペナルティ金額になるね」

A社長
A社長
「その税理士を訴えてペナルティを払わせることは可能ですか?」

武沢
武沢
「それは裁判所の判断だ。まずは速やかに申告すべき。税理士への謝礼支払いはきちんとしていたの?」

A社長
A社長
「期日に遅れたことはありますが滞ってはいません」

武沢
武沢
「何らかのトラブルは?」

A社長
A社長
「いきちがいがあって口論することはありました」

武沢
武沢
「先方もなにか不満があるのだろうね。で、今も連絡はとれるの?

A社長
A社長
「月に2~3回はメールや電話で決算書作成をお願いしているのですが」

そこで私はこんなメールを税理士に送るよう助言した。

武沢
武沢
「○月○日までに申告が完了しない場合、メールの交信歴を印刷して税務署に相談に行きます」

三日後に決算書が郵送されてきたらしい。
おそらく何らかのトラブルがあってこのような事態を招いたのだろうが随分大胆な税理士である。
何らかの腹いせで企業に逆襲したとしか思えない。

ひと段落して社長が訪ねてきた。
税理士と今度Zoomで話し合うので、オンライン仲裁してくれないかと好物のお菓子を持参して頭を下げられた。
心は揺れたが、即答でお断りした。
早々に契約を解除すべきと社長に提案した。
新しい税理士と一緒に良好なチーム関係をつくるほうが賢明だし、そのためだったらZoomに参加しますよと助言した次第。
果たしてどうなるか、現在進行中である。