実話ベース物語

岐路に立つひとりの女性コンサルタント

連休直前の4月、ひとりの女性読者から相談メールが届いた。
本人の了解をいただいたいので、内容を少しアレンジしてご紹介したい

こんなご相談だった。

「私は家庭内の収納や清掃などのコンサルティングサービスを個人対象に行っているHという者です。以前はライターをしていましたが、2年前に都内の自宅を拠点に開業しました。
現実は想像以上に厳しく、主婦からコンサルティング料金をいただくことの困難さを日々実感しています。
個人対象のコンサルティングビジネスそのものが無理なのかなー?法人相手でないといけないのかなー?などと思い悩み、ネット検索していたところ、偶然にも武沢様のメルマガに行き着きました。
本当はすぐにでもご質問したかったのですが、今日まで遠慮していました。
本日、意を決してご相談します。

個人対象のコンサルティングビジネスを武沢様はどのようにお考えですか?
やはり困難な道なのでしょうか?
また経営者の人脈がゼロに近い私が法人対象のコンサルティングを始めようというのは無謀なことでしょうか。ご助言いただけましたら幸いでございます」

以下は私から彼女への返信のあらまし。

質問はふたつあった。
個人向けコンサルティングをどう思うか、ということ。
もうひとつは、経営者人脈ゼロでも法人コンサルは可能かということ。

個人を対象に知識や経験をもとにした助言をするサービスはたくさんある。
「コンサルティング」以外の収益化にどんな方法があるかというと、何らかの「会費」、「通信教育」、「講座」、「セミナー」、「合宿」、「オンラインサロン」、「家元制度(個人版FC)」、「有料動画」、「有料メルマガ」、「定期購読紙誌」、「ファンクラブ」・・・まだまだありそうだ。
おこづかいや生活費の一部を割いて「学びたい」「稼ぎたい」「楽しみたい」「応援しい」といった気持ちを満たすサービスだ。

個人対象のコンサルティングビジネスを武沢様はどのようにお考えですか?
という質問に対しては「やり方次第で魅力的」とお答えしたい。
ただし、法人対象のサービスと比べると単価が低めになるのでその分、客数を増やす必要がある。
客数を期待する以上は、商圏は限定せずに、日本中を対象にすべきだろうし、言葉の問題をクリアすれば海外も視野に入れたい。

経営者の人脈がゼロに近い私が法人対象のコンサルティングを始めようというのは無謀なことでしょうか?
という質問に対しては「スタート時の人脈の多寡は関係ない」とお答えする。

私も28年前に開業したときは経営者の知人は数人しかいなかった。
しかも親しい人となると二人くらい。そのうちの一人と最初のクライアント契約をしていただき、あとは紹介をもらうことにした。

頃合いをみて私はこんな質問をしたのだ。
「○○社長のように経営計画づくりに興味をお持ちの名古屋の経営者は他にいらっしゃいませんか?」

すると予期せぬ言葉と行動が返ってきた。

「ワンサカいるよ。ちょっと待ってて」
そういって書棚を物色しはじめる社長。
何をしてるんだろうと思いながら待っていると、かなり厚めの名簿を手にもどってきた。

「武沢さん、これ愛知県の中小企業家同友会の名簿。2,000人以上の社長がここに載ってるんだけど、少なくとも半数はあなたのお客さんになると思うよ。しかも毎年会員が増えているから、一生武沢さんは仕事に困らないと思う。年会費7万円のこの会に入りさえすれば営業なんかしなくてもお客の行列ができると思うよ」

この社長の話は少々盛り過ぎだった。
だが、同友会に入会したおかげで経営者のことをつぶさに知ることができた。
規模の大小や業種の違いこそあれ、ほぼ同じようなことに思い悩んでおられることも知った。

人脈は一人いれば充分だ。
そこから一点突破できるし、ネットを使えば人脈ゼロだって起業できる。

こうしたやりとりがこの連休前後にあった。
果たして質問者の方が今後どのようなアクションをとられるかは分からないが、個人と法人、どちらにも勝機は充分にあるので、あとはご本人の選択いかんだと思っている。