世界経済

言葉の磁力、文章の磁力

ウォーレン・バフェットさんのことを勉強しようと思っても残念ながら文章がお上手に思えない。
翻訳の問題かもしれないが、残念な本が多い。
あれだけの投資家なのに非常にもったいない。(文章が良いバフェット本があればお教え願いたい)

日本人経営者から司馬遼太郎が支持され、ドラッカーや、ビジョナリーカンパニーのジムコリンズが人気なのは内容もさることながら、文章の力に負うところが大きいと私はみている。

作家は文章で勝負する職業なので、内容の魅力と文章の魅力の両方がなければ世界で通用しない。
その点、バフェットさんは投資家なので文章力が足りなくても問題にはならない。
ただ、ウィットに富んだ語りをされる人なので文章も磨けばできるはず。

経営者の場合はどうか。
強いリーダーシップを発揮する経営者の多くは、話力か文章力かのいずれかに長けているものだ。
時には両方に秀でている人もいる。
だが圧倒的に多いのは、両方とも平凡な社長。
話すのも書くのも苦手ではないが、特別に得意なわけでもない。
えたいことは確実に伝えられるが、相手の心を打つわけではないし、今すぐ行動へ駆り立てるような力もない。

そんな経営者が多いように思う。

言葉や文章に磁力を帯びさせることで相手への伝わり方が一変する。
磁力があれば受け手の感情に飛び込むことができるが、磁力がないと相手の知性にとどまる。
知性の奥に感情があるのだが、そこに飛び込む力が磁力なのだ。

その磁力は「狂」(きょう)とも似ている。
「知行合一」つまり、知ることと行うことは同じでなければならないと教えた陽明学は学徒に「狂」を要求する。
志を立てるところから始まり、行動に昇華することで終結する陽明学では、立志と行動は車の両輪の関係。
できるかどうか分からないことは軽々しく口にしないかわりに、口にしたことは必ず行動する。
そうした生き方を「狂」と表現した。
私たちも「有言実行」というモットーを口にするが、それに命をかけたのが「狂」であろう。

みずからを狂人に仕立てる以外に、生きる道をさぐれないと信じていた陽明学。
代表的な人物に吉田松陰や河井継之助がいるが、吉田の言葉に「思想を維持する精神は、狂気でなければならない」というのがある。
「思想」「精神」「狂気」、いずれも磁力に富んだフレーズではなかろうか。

日常会話はごく普通で充分だが、決めるときには磁力を帯びたパワフルフレーズを口から出せるようにしておこう。
当然、決めるときには、文章にも磁力を帯びさせるワザを身につけておこう。
それには、磁力に富んだ本を読み、磁力に富んだ文章を抜き書きして反復咀嚼すればいい。

今朝読んだウォールストリートジャーナルにこんな記事があった
海外でも磁力が求められているようだ。

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内省はシャン氏を際立たせるもう一つの特徴だ。
「創業者の文章力と自らを表現する力は、人を率いて管理する能力と高い相関関係がある。創業者に偉大な文章家は多い。美文家はそれほど多くはないが、彼女はそうだ」
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★ウォールストリートジャーナル
『大学中退26歳、米ヘッジファンド業界で独走』