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その承継は正しいか

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■【達人】とはこんな人・・・『達人のサイエンス』より

何事においても上達しない人のなかにはとても「せっかち」な人がいます。
一足飛びに進歩成長することはあり得ないのに、すぐに結果を期待してしまう「せっかち」タイプは失望するのも早いのです。
来る日も来る日も稽古する武道家のように稽古や練習のなかに本番と変わらぬ意識をもって取り組んでみませんか。

その承継は正しいか

●一昨年、東北のある街を訪れた。知人のA氏(50歳)が自慢の郷土料理店に案内していただいた。
珍しくて新鮮な魚介類と地酒の数々に感動したわけだが、その夜、もうひとつの感想も抱いた。
今日はそれを書いてみたい。

●カウンター越しに挨拶されたご主人のB氏はA氏と高校・大学の同級生で、最近、実家のこの店を継いだのだという。
おふたりは共に県内ナンバーワンの高校を卒業し、東北屈指の偏差値を誇る大学で学んだ仲。
「あなたたち、二人ともエリート学生だったんだね」と私。
「あのころは本当によく勉強したし、みんながよいライバルでした
我々二人は東京の上場会社に就職し、僕は結婚のタイミングで実家にもどって家業の佃煮屋を継ぎました」とA氏。

●B氏は、「僕は東京でギリギリまで粘ってたんですが、出向を命じられたのを潮時に去年、家族ともどもこの街に戻りました」という。
高校の同級生には東京Uターン組が多いらしい。
たとえば、自動車整備会社を継いだ池内君、地方映画館を継いだ佐藤君、老舗和菓子店を継いだ三浦君、市内に5店舗あるレコードショップを継いだ千葉君、りんご農園を継いだ村上君、明治時代から続く酒造会社を継いだ菅原君たちだが、今でも個人的な交流が続いているという。(名前は仮称)

●「もうみんないいオジさん、オバさんですよ」と笑うA氏。
私も笑ったが、実は内心では笑えなかった。
なぜなら、日本の国際競争力が低下の一途であることは昨日述べたところだが、その要因のひとつに人材のミスマッチが起きているのではないかと私は睨んでいるからだ
どうしてそんなエリートたちがそろって家業を継ぐのか?

●日本は諸外国に比べ、企業の平均年齢が高い。
長寿企業が多いわけで、欧米企業の中には「日本のように百年企業を目ざす」と宣言するベンチャーもいる。
(例えば「Evernote」)。
長寿企業が多いこと自体は良いことでも悪いことでもない。
問題は、なぜ日本に長寿企業が多いかである。

●私は「家制度」の名残りがあるからではないかと思っている。
治時代から昭和の初期まで続いた日本の「家制度」「家族制度」は、戸籍に基づく家族が一つの家に属し、戸籍の主(戸主、家長)を筆頭に嫁、長男といったヒエラルキーがあった。
そこに籍を置くことで正式な家族とみなされた制度のことをいう。
廃止されて70年以上経つが、それでも日本には「戸籍」がいまも残っているため、無意識のうちに「家制度」の名残りがある。

●ドイツも日本同様に家族秩序を重んじる国で「家族簿」は今も存在するが「戸籍」というものはない。
スイスにも家族単位の登録が行われているが「戸籍」はない。
世界をみれば、「戸籍」制度がある国は日本、中国、台湾だけで、韓国は2007年に撤廃された。

●戸籍がいけないと言っているのではない。
戸籍があることで自分のルーツが分かり、家系図をつくることができるというメリットもある。
私も家系図があり、江戸時代までルーツを遡ることができるのは「戸籍」があるおかげだ。
日本ほど戸籍データが完備された国はないので、これは誇るべきことだと思うが、家族制度の名残は早く撤廃すべきだと思う。

●そうしないと、「実家」「家業」という意識が親子に強く残る。
良い子は家業を継ぐもの、という意識が働いてしまうのだ。
アメリカでは生後早い段階で親子の寝室を分けて自立を促すほどなので、先祖代々の家業を継がねば、と子が思うことはない。

●話をもどす。
承継にも善なる承継と悪なる承継がある。
東北の学校エリート達が実家を継いでいるわけだが、その事業の多くは明治伝来、昭和伝来の家業だ。
先端の半導体やAI、DX、ノーカーボンの分野ではない。
本来、承継する必要がない事業まで承継しているのではないか。
の承継は本当に必要か。
廃業して別の事業を興すほうが生産的ではないか。
どうしても存続させたいのなら、先代が元気なうちに事業再構築すべきではないか。
それが善なる承継の条件であり、意図がない承継は悪なのである。

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