その他

早く失敗してくださいよ、と私

●「正しい」か「間違っているか」を気にする人がいる。人生の諸問題は学校のテストのように「正解」「不正解」などはない。
自分の価値観や信条や好みに合っているか、いないかの問題だ。

●人生に限らず、ビジネスでも投資でも同じだ。
先日の「経営と投資研究会」のとき私が中国株情報の入手の仕方を解説したら、ある人が発言した。
「申し訳ありませんが私は中国という国や企業に投資する気持ちは一切ありません」
私は、「全然OKですよ、中国株投資をすすめているわけではありませんから」とお答えした。一般的にいえば、投資家が中国株投資の情報を遮断するのは賢いことではない。将来に備えて勉強しておくのが正解だと思う。だが一般的な正解・不正解ではなく、氏にとって中国に投資すること自体が不正解なのだろう。

●話題が脱線するが、今年前半(1月~6月)を振り返って、日米中のうち株価が最も上昇したのがアメリカだった。半年間で15%ほど上昇している。次が中国で10%ほど上昇した。日本は残念ながら最下位で0.7%しか上昇していない。

●個別銘柄のうち、半年間で株価が10倍以上になった銘柄は日本では皆無だったのに対し、アメリカは3社、中国は7社あった。
近い将来、中国がアメリカと肩を並べ、あるいはアメリカを追い越す国になるのか、それとも米中の関係悪化をきっかけに中国が没落していくのか、それは誰にも判らない。我々はどうなっても良いようにしておくだけである。

●高等数学で習う『一般解』と『特殊解』。どのような条件でやっても答えが一緒になるのが『一般解』だが、特定の条件下では答えが変わるのが『特殊解』だ。

●いつも一般論しか言わない人がいるが、その人の頭のなかは一般解しかないはずだ。特殊な条件下にある人間や企業に対して一般解のアドバイスを送っても無意味だ。特殊解をアドバイスできるようになろう。特殊解は時によって、一般解の正反対になることもある。そんなとき助言相手は面食らった顔をする。そこで問われるのがあなたの信念だ。

●ある日のZoomセミナーで私は参加者のひとりに「早く失敗してください」と話しかけた。
なぜならその女性がこんな弱気をもらしたからだ。「準備と勉強はしているのですが、だんだん重荷に感じる様になってなかなか行動できません」と。私が「まず行動してみることが大切ですよ」と申し上げたら、「失敗したくないのでまず行動するという考えになれません」と彼女。

●ははあ~、そうなのか。この人は失敗したくないんだと私は内心で思った。

武沢:もちろん私がいう失敗は大失敗ではなくプチ失敗ですよ
女性:どうしてわざわざ好んで失敗などをするのですか
   (他の受講者が黙っているのをみて)どうして皆さん、黙っておられるのかわからない。
武沢:理由は簡単ですよ。あなたが好むと好まざるとに関係なく最初は失敗するからです
女性:最初は失敗?
武沢:ひょっとしたら最初だけではないかもしれない
女性:はあ?じゃあなんでこうして勉強しているのですか
武沢:失敗しないためじゃなく、失敗の回数とダメージを減らすためです。それでも失敗はなくならない。失敗は忌み嫌うものではなくて、成功の付属品です。いや、失敗の付属品が成功なのかもしれない。
女性:・・・

●このやりとりが受講者の女性に何かをもたしたのかは分からない
何しろ昨夜の話だからだ。お金をいただいて講義をしている人間が
「早く失敗してください」などと公言してはばからぬ。それはいかがなものかと言われそうだが、それが現実なのでためらうことなく申し上げた次第。

●学校エリートが起業や投資を嫌う心理がここにある。正解を求めて勉強と研究を行うが正解が見つからない。時間だけが過ぎていく。
この質問者の女性もひょっとしたら、学校エリートだったのではなかろうか。