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応募学生の「人間レビュー」に参った社長

応募学生の「人間レビュー」に参った社長

※個人名、企業名は仮名ですが内容は実話です。

●高村住宅サービス株式会社では、毎年新卒学生を10名程度採用している。
営業系人材と技術系人材をバランス良く採用してきたわけだが、高村社長にとって、数年前の澤田君の採用はいまも忘れない。

●最終面接に残った18名の中から10名を決める役員面接。
澤田君はバスケットボールに情熱を傾けてきた学生で、地域のクラブ活動で子どもたちにバスケットを教えてきた。
ただ、スポーツマンの割に地味な印象だ。
体格も中肉中背で面接時のやりとりの内容もごく普通。
スポーツマンによくあるハキハキした感じはなく、押し出しの強さもない。

●社長は内心で「つかみ所がないので×かな」と思いながら、最後の質問をした。

「ところで澤田君、君がうちの会社に入ってくれることになったら、どんな活躍ができそうですか。抱負や自己アピールのようなものはありませんか?」

すると澤田君は「社長にご覧いただきたいものがあります」そう言って、カバンをゴソゴソしはじめた。
何がでるのかと注目する高村社長。
澤田君が取り出したものは色紙だった。
しかも5枚ほどある。

●それを澤田君から受け取った高村社長は、色紙の文字に注目した
ど真ん中に「澤田君の高村住宅サービス就職を応援します」と書いてある。
周囲には「澤田君の誠実さは私が保証します。木下花子」、
「澤田先生のおかげで中学生の息子の性格がたくましく、優しくなりました。澤田先生は恩人です。斉藤真理子」
「澤田先生、インターハイに僕が行けたのは先生の教えを自分なりに守れたからです。先生の就職成功、祈ってます。山田高校、城島太郎」

5枚で100名近い親や生徒たちの寄せ書きだった。

●高村社長はその場ですべてのメッセージに目を通しながら鳥肌が立っていた。
なんてすごい学生に自分は×を付けようとしていたのか
自分の目は節穴なのか。
もし自分が×を付けたら、ここにいる100人すべてを敵に回すようなものだ。

●ため息をつきながら高村社長は確認質問をした。

「これはあなたがお願いして書いてもらったのですか?」
案の定、答えはノーだった。
就職活動よりもバスケット指導に情熱を傾ける澤田君のことを周囲が心配し、親御さんたちが率先して寄せ書きをつくってくれたという。

●この話を高村社長から聞いて私は「人間レビュー」というものが頭をよぎった。
ネットで商品を買うとき、必ずレビューをチェックする。
レストランを予約するときはレビューしかみないときもある。
今後、テクノロジーが進化すると、商品レビューの人間版が可能になるだろう。
澤田さんにスマホを向ければ★4.5と表示され、そこをクリックすれば投稿者のコメントも確認できる。

●図らずも澤田君はそれをアナログで実現してくれたわけだ。
「澤田君はいまどうしてますか?」と私
「当社のWEBマーケティングのエースです」という答えが返ってきた。